天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「心に残った本」

 最近読んだ本の中で、心に残った本は何か、と言われるとすぱっとは出てこない。あれとこれと、それからあの本もなかなかという具合なので、そのいくつかを挙げてみる。何故このようなことを書くかと言うと、このブログ管理者からの「お題」として提起されていて、それに反応したまでのことだ。
 で、その本達は何かというと、まず1冊目はこの日記の趣旨にちなんで中国本の「中国の一日 1936年5月21日」(茅盾著)だ。これは副題の日付の日に、中国の各地から書き手が実際にどのような一日を過ごしたかを書いたものを集めて編集したものだ。面白い企画であるということと、その時代に実際に庶民によって書かれた文章であるということ。即ち現在の中国人民共和国成立前の中国を生で見ているようで面白かった。その頃何があったかというと、日本軍が侵略しつつある頃であり、毛沢東が権力を得てゆく過程にあった。そういう意味で、歴史の進展しつつある中の庶民の姿が浮き彫りになる。
 次も中国本で「ホームレス留学生」(張国海著)。これは現代の、日本に来ている中国人留学生の涙ぐましい努力の物語だ。大変な借金をして日本に来て、日本語を学ぶところから始めるのだが、アルバイトをして生活しながら、借金も返す。これができて、更に日本の大学に入学する。今は著者は日本の企業で働いている。彼にとっては、日本に来るという決断をしなかった場合と今とでは、雲泥の差がある状況であろうと思う。あっぱれ!と言いたくなる。親のスネかじりで大学を出て、就職難のタイミングで卒業しないために大学院にも行ったりし、それでも人生の目的もわからず、自分探しの旅などというものに出かけたりする日本の若者に読ませてやりたい。
 その彼は約百万円相当を借金してきたらしいが、中国の貧しい農村の人々に誰がそんなお金を貸すのか、というとこれが貸す人がいる。留学専門の旅行会社が、闇金融と組んで若者に金を貸して送り出すのだ。即ち地下経済そのものである。そこで、つい最近「中国の地下経済」(宮坂聰著)という本も、あまり知られない事実を教えてくれたと言う意味で、心に残る本の一つだと言える。
 こうしてみると、心に残った本というのは小説のようなフィクションではなく、事実を書いたものだった。「事実は小説より奇なり」という言葉がある。この言葉は元々はバイロンの詩の中にある言葉らしいが、昔のテレビ番組「私の秘密」のオープニングで高橋圭三アナウンサーがよく言っていた。古い!ともかく、まさに事実ほど心を打つものはないと言えることを、本の話で実感した。歴史小説が人気があるのも、実在した人物や出来ごとに基づいて書かれているところが面白いのであろう。西洋では伝記という読み物も結構読まれていると聞く。