天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

山本作平衛

 先日テレビの美術系の番組で山本作平衛という人が紹介されていた。思わず見入った。この人は、今は他界されているが、九州は福岡の筑豊炭鉱の炭鉱夫であった。炭鉱が廃坑となってから、当時の様子を絵に描くようになった。その絵が、今年、日本国内で初めてユネスコ世界記憶遺産に登録されたということだ。
 登録の選定基準は「世界歴史に重大な影響をもつ事件、時代、場所、人、主題、形態、社会的価値を持った記録遺産」というのだから半端じゃない。元炭鉱夫がちょっと絵が上手という程度ではありえない。テレビで紹介された絵を見ると、水彩画で、横に筆で場面の解説が書かれている。炭鉱なので、命にかかわる事故がしょっちゅう起きていた。絵は、爆発事故、水の事故などがそこに居合わせた人々の表情も豊かに描かれている。赤ん坊を背負った子供を連れて、炭鉱(ヤマ)に入るおかあさんとか、お父さんと協力して働くお母さん。その胸ははだけている。暗い、暑い炭鉱の中では、誰の眼も気にすることがなく、ひたすら働き続けたのだなということが分かる。仕事を終えて皆で風呂に入る場面は、男も女もない。
 不思議なことに、これらの絵に暗さがない。今にして思えば、劣悪な労働環境に置かれて生活する夫婦と子供たち。その昔は、子供は学校にも行けず親の仕事を手伝った。それでも、この山本作平衛さんの絵が暗くないのは、当時の生活を悲観的に思い起こして記録しようとしたのではなく、当時の生きざま、置かれた環境の中で人として精一杯生きていた皆の様子を懐かしんで描れていたのではないか。
 中国には炭鉱がまだまだ沢山ある。労働環境はかつての日本より場合によっては劣悪な場所もあるにちがいない。農村からの出稼ぎで、食い詰めて行き場の無くなった人たちが行く所とも聞いている。家族でそこに住む、ということは考えにくいが、世に知られてないだけであるかもしれない。余裕ができたら、そういうところも行って見てみたいものだが、恐らくそのような場所は外国人がカメラなどもって入れる場所ではないだろうな。
 山本さんの絵は、福岡方面で原画の展覧会があるらしい。できればこちらは旅行を兼ねて見に行ってみたいものだ。中国旅行にするか、九州旅行にするか、よおく考えてみよう。