農民工(その2)
農村からの出稼ぎは、「留守児童」というかわいそうな子供達を作るので、よくないということを前に書いたが、沿岸部の工場が成り立つのはこの農民工あってのことだ。地域格差があるので、農村から来る人たちは安い賃金でも働く。田舎で働くより、工場で働く方が安くてもまだまし、ということなのだ。春節には田舎に帰り、暖かくなるとまた出てくるということを繰り返す人が多かった。が、今や都市住民として住み着いているような人たちもいる。即ち、単なる出稼ぎではなく人口の移動とも言える。しかし、農村に生まれた人が町で暮らすには都市戸籍を持たないと、教育費など都市住民よりも割高になるらしい。
農村が健全化されるとともに、農村から出て来て労働力として機能している人々に、平等な待遇を保証するような社会になってほしい。日本はその点は平等だったろう。
父のケースを見ると、田舎の次男坊ということで、山や農地を相続しない代わりに早くから東京に出て、教育を受けて独り立ちしろということだったらしい。少年時代に独り暮らしを余儀なくされた父は寂しかったろうが、同郷のおじさんとたまにあったりしていたらしい。今の中国で同郷の一族が都会でも連絡を取り合い、協力し合っているパターンと同じだ。そして結果その生活は、田舎に残っているよりも華やかで、物にあふれたものになった。
中国の田舎の若者も、家族や親せきの援助を得て大学に入り、都市の企業に就職をする人たちが増えている。こうなると出稼ぎではなく、人口移動そのもののパターンと言える。そういう若者が多いので、受け入れ先である就職口の方が少ない。日本も今は大学生の就職率が少ないことが問題になっているが、中国はその規模がきっとすごいだろう。就職待ちの人たちを蟻族と呼ぶらしい。
蟻族と呼ばれる人たちの問題はあるにしろ、これは農民工というのとはちょっと違う。農民工というのは、あくまでも農村で生まれ本来農業をすべきところ、季節労働者的に都会へ出る人たちのことだろう。あるいは、若い女性で都市に出るケースも多い。中国の農村では女子は家を継がない。男子が尊重される。若い女性は、外に出て独り暮らしをして家に迷惑をかけずに暮らす、というパターンが多い。その大半が女工さんになるわけだ。これも農民工の一角を担う。即ち中国経済の基盤となっている。
農民工は、中国経済の基盤なのだ。中国奥地の色々なところから沿岸部に出る。新疆ウイグルからも来る。そこで色々いざこざも起きている。経済基盤となる人たちの生活は安定したものになってゆかねばならない。