天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

サラム

 イラン人作家シリン・ネザマフィが留学生文学賞を取った作品「サラム」。こちらは、アフガニスタンの少女を題材にしたもの。これまた自分の日常性からかけ離れたもの。しかし舞台は日本。難民認定をめぐる物語。
 これはきつい。途上国の問題とか、同情とか、支援とかといった事柄を飛び越えて、一人の人間の生き様、そして根底には愛が見え隠れする。日本という国の自己中心的あり方も浮き彫りにされている。
 これはペルシャ語か何かを話すシリン女史だからこそ書ける作品だろう。文学としての評価もさりながら、ここに書かれているおそらく事実に驚く。小説なので、ルポのようにすべてが実際の出来事ではないかもしれないが、このようなことが起こらなければ書けないはず。
 ここでまた、今の日本が、そして日本人がいかに身勝手かということについて、やはりそうかと思う。もちろん、物語の中の弁護士は商売抜きでアフガニスタンの少女を助けようとする。そういう殊勝な人もいるにはいる。少なからずいるのかもしれない。しかし、所詮日本の中で出来ることをしようか、というくらい。それでいいのかもしれないが、もう少し何か具体的に、あるいは積極的に何かをできないものか。
 アフガニスタンを地図で調べたら、中国と接している。崑崙山脈の山続きでアフガニスタンの国内に至る。小説が書かれた背景は、9.11にも関わるので、2001年のこと。その後、即ち今の状況はこの頃より多少は改善しているかもしれないが、実情はよく分からない。分からない中で、同じ人間として生まれた人たちが、いまだに大変な思いをしているに違いない。
 中国の先にはこのような地域もあるのだ。
 サラムという言葉の持つ意味は何だろう。「人生でどんなことがあっても『サラム』と言うべきだ」という言葉が、重要な働きをしている夫の居場所をタリバンに話さず、殺されていった母の口から出ている。「運命だからちゃんと受け入れないと・・・」とある。そのことを話しながら、身寄りのないアフガニスタンに帰って行く少女の姿は重い。

追伸:昨日の水泳大会で、2位になっていたことが判明。今日、表彰状とメダルをもらってきました。