天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

ワイルド・スワン

 この本の著者、ユン・チアン女史は現在も英国在住。これを読むと、我々と同世代の中国人がどのように育ち、どんな青春時代を送ったかよく分かる。よくわかるどころではない。その頃の中国はなんと悲惨な国だったのだろうかと思う。私がよく知る、今の若い中国の人たちの親の世代だろうか。
 この本のすごい所は、文化大革命の頃の中国の現実というところと、この文章自体だろう。訳者あとがきにあるように、清朝末期から約1世紀にわたり、広い地域をカバーし、ただ悲惨な現実を暴露するだけでなく、その中で純粋に生きた、文字通り人民の為にと心と体をかけた人がいたことを、巧みな文章で描いている。
 パールバックの「大地」を超えた、ということだが、大地も読んでみなくては。彼女は2005年に次の作品「誰もしらなかった、毛」という本も書いている。夫のイギリス人との合作となっている。両方とも中国では発禁だ。この本に書かれている事実を中国の農村を中心とした一般庶民が知ったなら、大混乱になってしまうカモ知れない。天安門毛沢東の写真など、ぶっ飛ばされてしまうカモ知れない。
 歴史に残る人物とは、このようなものなのだろうか。秦の始皇帝だって、自分の権力に邪魔になる多くの人々をなき物にしている。毛のような強烈にあくのつよい人間が、中国の独立には必要だったのカモしれない。あるいは、あのような悲惨な過程を踏まなくても、時期が来れば中国農民は貧困から開放されるときが来たのカモしれない。
 すべては、カモ知れないということで、現実にあるのは現在の事実だ。
 これから中国農村の7億人の市場が拡大する気配。私の育った時代の中国は、過去のものになってゆくのだろうか。