天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

横濱中華街物語

 「横濱中華街物語」という本がある。週間ブックレビューというTV番組で以前誰かが紹介していた本。昨日、本屋で見つけたので購入して一気に読んだ。本の宣伝になってしまうかも知れないが、書いてしまう。
 今年は横浜開港150年ということで、地元では色々イベントが催されている。この本もそのタイミングで企画された聞き書き本だ。語り手は林兼正という日本国籍を得た、中国出身の中華街育ちの人。萬珍楼の店主。横浜が開港されて150年というが、日本が開国しての歴史と重なる、というくだりから始まる。まさに、明治の文明開化の文明の入り口が横浜だったわけだ。
 でもその後、横浜の場合は関東大震災で壊滅し、太平洋戦争末期の空襲で再び焼け野原となっている。そのため、町並み自体は60年強の歴史というわけ。人も代々入れ替わっている。
 この本の語り手は、父親が広東省から裸一貫で横浜に来て、2代目。日本で生まれ育ちながら、普通の日本人では経験できない育ち方をしている点が面白い。日本で唯一の中華学校に入り、日本の中学に進み、最後はインターナショナルなアメリカンスクールで色々体験する。生粋の頑固な中国人の父親に育てられた。
 細かいことは省略して、この人は何国人かというと、本人は華人であるとおっしゃる。国籍は日本。日本の国籍を持つと海外へ行くのが自由で便利。親父の故郷は中国、本人の故郷は横浜中華街。まさにコスモポリタン。国と言う枠を超えて、人類が幸福を追求すべきという活動を地道にやっているように思える。
 中華街物語といいながら、本としては語り手の伝記的な要素が強い。が、彼の生い立ちを通して中華街というものが見えてくる。中国でもない、日本の他の街とは違う、日本にある華人の街。日本に住む中国人であることから、差別という問題も経験されている。彼は、それすらも、状況により当然起きる現象として捉えているところがすごい。
 朝のテレビ番組では、選挙を控えて政治家たちの議論が放送されていた。「日本の将来を云々」ということで政策を批判しあっている。私は、もう少し大きな視点で語れないものだろうかと感じた。この地球上に生きているのは日本人だけではないだろう。昨夜は、核の抑止力は核を持つしかないなどと、あきれたことを言う人もいた。
 国を超えて、人間同士がいたわり合える社会を実現するために、我々日本人は何をすべきか。と言う視点で政治を考える政治家がどうも見当たらない。国を超えて、対中国で言えば日中友好。お題目だけでは仕方が無い。庶民レベルで言えば、中国の格言に「自分の家を富ませたければ、まず、自分が所属している地域を富ませることだ」というのがあるらしい。林さんは、国にこだわらず日本の横浜でこれを実践されている。政治レベルで言えば、「家」を「国」に置き換えて見ることができないだろうか。