天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

38 李香蘭 私の半生

 日中友好を考える本という評価をしたい。

 李香蘭こと山口淑子さんは、晩年は政治家として活躍された。何故か自民党ということに疑問を持つ向きもあるが、この本はそこまでいかない李香蘭をやめたころまでのまさに半生の記録。
 李香蘭というと、戦前・戦中・戦後を通じて活躍したスターであり、その名前から中国人と思われていた時期もあり、スパイではないかと疑われたこともあった由。そのあたりの事実関係が本人の口で語られているのがこの本。
 満州で生まれ育った日本人。中国で芸能界デビューしたので、中国名をつけた。中国語も話すので、中国人と思われても仕方がない。
 中国人であったなら、戦争が終わった時に中国の軍事裁判で売国奴として処刑されたかもしれない。つまり戦中の芸能活動は、中国人相手に日本を正当化するための活動だったり、日本の兵隊を慰問する活動だったり、日本向けのものだったのだ。
 若くして芸能界に入った本人は、政治的な意図など慮るはずもなく、ただ歌の評価を得られること、いい映画を撮ることに生き生きとしていたのだ。
 後になって、日本軍に利用されていたことを自覚する。つまり自覚のないまま結果として侵略戦争の片棒を担いでいたことの償いの意味もあって後半の半生は政治家として、日中友好を意識した活動をしていたに違いない。が、この本では当時の自分の行動を反省するくだりは、あとがきの部分であり、芸能活動をしていたころのことは、当時世話になった人たちの様子を交えて、臨場感あふれる物語となっている。しかし実話だ。
 戦時下の上海がどんなであったか、そこに暮らした人の口で語られている。今まで、本や映画で知るところであったことが、そこに生きたまさに生き証人の語りであり、また李香蘭というスターの生きざまは、他の人とは違うにしろ、時代に翻弄された人たちの姿に変わりはない。
 彼女は、日本人であったので処刑を免れたが、同じように生きて、中国人であったために罪に問われた人たちもいたことを思うと、国籍ってそれほどに重く見る必要があるのかどうか、はなはだ疑問に思う。蓮舫さんの国籍をめぐってとやかく言う話があるが、日本をまともな国にしようという活動を日本で暮らしている人が行うのに何も問題はないと思う。
 山口淑子としての後半の人生の記録も知りたい感じがする。