天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

満州国物語−遅子建著

 テレビドラマの「遥かなる絆」全6回を見終わって、原作の「あの戦争から遠く離れて」も読んでみた。著者の父、孫玉福さんご本人の作品もあるようなので、注文中。その間、以前入手した「満州国物語」上下巻を読み始めた。
 舞台は同じ満州。時代もほぼ同じ。どちらも女性作家。前者は満州国崩壊当時から現在に続く流れであり、執筆者は日本人。後者の執筆者は中国人で、視点は当然中国人。満州国があった頃の中国人社会を実にリアリスティックに綴っている。共通点は、反戦というところに落着く。満州国などというようなものを二度と作ってはならないということを感じさせる。結局は支配、被支配の両者にとって不幸な結果になったということ。
 しかし、その中で描かれている人間模様が読ませどころ。中国社会の人間模様だ。前者は、満州国崩壊と共に始まる日本人庶民の辛苦に際し、周りの中国庶民の暖かさが強調されている。それに比べて後者は、満州国崩壊まで、日本が侵略中の中国庶民社会が生々しく描かれている。これを読んでいると、中華民族の性癖は当時も今も大して変わらないとも感じられる。性癖だけでなく、基本的な生活のつつましさも感じられる。
 いまや、中国沿岸部の都市生活者の中の富裕層は、つつましさとは縁遠い生活感覚を持っているということはあるが、まだまだ大多数の中国の農村を中心とした庶民は、実につつましく、延々と営まれてきた中国の生活を続けているのだ。
 それがどのようなものなのか、順次明らかにして行きたい。