天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

ラーゲリより愛をこめて

 昨年末からやっている映画。東中野のポレポレ座で見ようと思っていたが、笛の帰りは時間帯が合わず、まだ見てなかった。先に孫リンが見て、「めっちゃ感動した」という感想をくれた。

映画『ラーゲリより愛を込めて』公式サイト (lageri-movie.jp)

lageri-movie.jp

 小学校4年生がそういう感想をもつ映画ってどんなか。いつもは孫たちと行く東宝シネマに一人で行ってみた。家内を誘ってみたが、案の定行かないという。藤井聡太羽生善治が対決しているので、目が離せないらしい。実際はYoutubeをつけっぱなしにしているだけで、見てはいない。

 映画は、シベリア抑留者の実話だそう。シベリア抑留ということ自体、戦争終了後の出来事で、ロシアが国司法に違反して元日本兵を労働者として、奴隷のように開拓作業をさせていたもので、ロシアが嫌いになる映画ともいえる。

 抑留者の生活は、ロシア側の作戦で多くの日本兵を元の指揮命令系統をそのままにして作業をさせていた。そういうことを以前本で読んだが、映画でもそうだった。

 映画では、抑留生活が終わって帰国の列車の途中で数名が降ろされて、戦争犯罪人としての裁判にかけられ、有罪となって更に別の場所で抑留生活が続く。主人公の山本氏もそこでスパイの罪に問われて有罪とされるが、それは仲間が彼の名を使った嘘の供述をしたことによる。自分が助かるために友人をも売るという行為が行われていた。

 その収容所では、当時の言葉で赤化した日本兵が、先般たちを糾弾する。まるで文化大革命の糾弾集会と同じようなことが収容所内で日本人同士で行われていた。シベリアがえりは共産主義者だ、と心無い言われ方をした時代があったが、それはこうした事実があって言われていたのかと思った。

 山本氏は、自分を裏切った人を許し、兵隊でなく漁師のせがれで漁船に乗っていた所を拿捕されてそこにいる青年には字を教え、などなど一緒に生活する人たちに心からの誠意を尽くす。それがみなに伝わってゆく。

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 彼は、癌に侵される。病室に寝かされているだけでちゃんとした治療も受けさせてもらえないので、同僚たちは彼を大きな病院で見てもらいたいという要求を掲げてストライキをする。それが通って病院で見てもらったが、時遅し。手遅れで余命3か月ということで収容所に戻される。仲間は、彼に遺書を書かせる。遺書以前に入院中に山本氏が日記のように書いたものもあったが、収容所では時折、持ち物検査と称して、捕虜たちが持っているめぼしいものをソ連兵が没収することが日常だった。特に字を書いたものは、厳しく取り上げられた。

 山本氏の家族は、ソ連の爆撃が始まった直後に日本に帰国していた。軍隊上層部の家族ではないので、帰路は大変だったろうが日本で必ず再会するからという約束を信じて山本氏の奥さんは、子供四人を育てながら夫の帰りを待っている。

 収容所の仲間は、山本の書いた遺言を家族にどうしても伝えようとして、4人が手分けしてその遺言を暗記する。そして抑留生活が終わって帰国した後、彼らは次々と山本氏の家を探し当て、自分が記憶した遺言を読み上げながら、書きだした分を妻に手渡す。これがクライマックス。

 極限状態に置かれた中でも、人間性を失わず、仲間にも誠実に生きた姿は、ホローコーストのコルベ神父を思い起こさせた。ウーム、そういう人は日本にもいたのだ。

 感動の映画ではあるが、孫リンには「戦争がいけないんだね」と初めに返信した。戦争を美化するまで行かなくても是認するような受け止めをしてはいけない。

 人間性を大切にすることが、よりよい生き方(人間らしい生き方)に繋がるってことが主題の映画。のはず。