天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

2 後世への最大遺物 内村鑑三

 内村鑑三の「代表的日本人」という本を本で、内村鑑三という日本人をもっと知るべきだなと思いより寄せた本。
 これは、氏が箱根で講演をしたときの記録。講演はいつかというと、明治27年日清戦争が終わった直後のタイミングだ。これから志を持った若者が何をしてらいいのかという時に彼らに与える指針と思われる。
 これから後世に何を残したらいいのか。まずお金。キリスト教徒であるがルター派といわれる人たちは、お金を稼ぐことを否定しない。
 しかし「最後は金目でしょ」などという破廉恥な輩とは違う。お金で社会に貢献できることはたくさんある。自分が贅沢するためのお金ではない。使い道によってはお金でかなりの社会貢献ができるので、お金を稼ぐこと自体は是としている。
 その能力に長けていない人は、事業を起こして雇用を増やし、社会に有用な物を生産すること、インフラを整備することなんでもよい。その事業の結果、社会がよくなる、人々の暮らしが改善されることならいいではないか、というもの。
 それも条件が整わないという人は、人を育てることができれば、社会に貢献する有意な人物が増え、そういう人を残すことが大きな社会貢献になる。

 それができなくても、一人で文学に携わり、世の中の人を啓蒙することで社会をいいほうに変えられる。そんないいことはない。そのいい例としてジョン・ロックを挙げている。この著作’Human Undastanding'をルソーが読み、モンテスキューが読み、ミラボーが読んだ。そしてフランス革命へと発展した。この動きは止まらず、ヨーロッパに民主主義を行き渡らせ、アメリカ合衆国ができた。
 なんだか政治史を振り返るようだが、こういう見方もあるのだなと、時間が許せば改めてこのあたりの著作をかじってみようかと。
 さて後段には「代表的日本人」にも書かれていた二宮尊徳に触れて、彼の偉いところはその成したる事業そのものより、彼の生きざまを示したことだとする。
 そして、最大の遺物とは、残した金の多寡ではなく、事業の大小でもなく、著作の有無でもない。
 「いっそう良いのは後世のために私は弱いものを助けてやった、後世のためにこれだけの艱難に打ち勝ってみた、後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた、という話を持ってふたたびここに集まりたいと考えます」と講義を結んでいる。内村鑑三ってこんな素敵な人だったのだ。
 嘘ばかりついて、アメリカに媚びを売って権力維持をし、弱者を蔑ろにしている今の政権担当者にこの百分の1の気持ちがあればなあ。
 ん、外はこんな景色。