3 デンマルク国の話 内村鑑三
これは内村鑑三の「後世への最大遺物」という本にくっついていた短い文章。デンマルクというのは無論デンマークのことで、デンマルクはいい国だという紹介。ま、他の北欧の国のように社会が成熟して、市民社会の形成などについて書かれているかと思ったら、違った。
デンマークは、第一次大戦に敗戦国となったが、その後豊かな国になった、その過程、努力の視点が述べられていて、これは実録でもあるので、現在でも大変参考になる。いや、すべきことが示されている。
敗戦国というのは争った領土は召し上げられて、復興が大変だ。日本は、お隣の朝鮮戦争のおかげで景気が一気によくなり高度経済成長へとつながった。ある意味ラッキーな状況でもあったので、逆に真剣な社会づくりに専念することなく、経済優先で何となく国民の生活が豊かになってしまった。それでも皆が皆ではなく、取り残されたり、犠牲になった人たちがいることは忘れてはならない。水俣病などの公害の被害者や、沖縄、また在日外国人の人のように、と同じ条件で豊かさを享受することができないまま現在に至る。
デンマークは何がよかったのかというと、敗戦で豊かな国土を削られたが、荒地と化していたユトランド半島を見事に森林に復活させることによって豊かさを取り戻した。そういうことが書かれている。それを行ったのがフランスから追放されたカルヴァン派のプロテスタントの親子。
つまり国を豊かにするには領土拡大の戦争に勝つことではなく、敗戦であったとしても、それを機に勤勉な働き、それも自国にある自然を活用する知恵と努力だ、というわけ。内村鑑三はプロテスタントであるので、そういう勤勉さが宗教に基づいていることに気づきを求めている。
これが書かれたのは大戦よりずっと前だが、今の日本人がよくよく学ぶべきことが記されている。宗教や宗派は何でもよい。神の声、すなわち自然の摂理に耳を傾け、従うことを是として知恵を絞って努力をする。中小企業の中には、独自の技術力を売りにしていてこれに近いふるまいの会社があるようにも思える。
最悪は原発だ。制御もできないシロモノでエネルギーを売りにする。もはや電力のための必要性が無くなっているのに、まだ政府主導で再稼働したり、海外販売までしている。国民のためにならないことおびただしい。