天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「永遠の0」百田尚樹著

 4人の先輩が推薦する本で、「涙なくしては読めない」などと皆が語る小説。読み終えた先輩から家に送りつけられた。郵便代金として390円の切手が貼ってあった。本だけ送るのなら、開封で送ればずっと安いはずなのに普通郵便だった。勤務先から官費で送っているので、値段を気にしないのかもしれないが、これだとブックオフで中古本を買うのとどちらが安いかという値段だ。
 雑談はともかく、本題に入ると、これは特殊な環境に置かれた中での人間愛を描いた小説だと感じた。巻末の解説は、NHKのブックレビューを長い間担当されていた俳優の児玉清さんだった。こちらも絶賛する小説。児玉さんはボロボロ泣いたらしい。私は主に電車の中で読んでいたので、ボロボロというのは避けて、ウルウルしながら読む場面があった。
 タイトルの中の「0」というのはゼロ戦のことで、ゼロ戦の飛行機乗りだった人達の話だ。読んでいると、子どもの頃にプラモデルを作ったゼロ戦がどんな飛行機だったのか、そのパイロット達がいた海軍の航空隊とはどんな所だったかよく分かる。そして生き残った人達はどんな風に戦後を生きてきたか。
 読んでいて途中までは戦争本の一種かと思ったが、後半になって尋常な場面では見られない人間愛を描いたものだということが分かった。
 本の構成は、プロローグとエピローグはゼロ戦と戦った米軍の回顧としてあるが、中は主人公のゼロ戦パイロットを祖父にもつ兄弟が、自分のルーツ探しのような感じで、終戦間際に特攻で命を落とした祖父のことを、まだ生きている人を訪ねながら祖父がどんな人であったかを明らかにしてゆく。ちょうど並行して読んでいるダニエルスティールのLEGACYという本も、自分のルーツを調べてゆく流れでできている。これは一つの小説の手法だ。
 そういうことは分かっていてもなお、感動を誘う優れた作品だ。毎日が死と隣り合わせの極限状態にいながらもなお、人を愛することができる素晴らしい人間像を見せられ、魅せられる。そうしてわが身を振り返り、残る人生をどのように生きようかと姿勢を正す思いになる。