天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「舞姫」森鷗外

 文語文の文章による文芸作品とはいかなるものか、と手にしたのがこの本。ついこの間、即興詩人の口語訳を読んだことから、元々鷗外の文語文で書かれた即興詩人オリジナル版を読もうかと考えたので、文語調に慣れる為に短い作品から読んでみようかという思いであった。最近、本ネタが多いが他にネタ切れ?ズバリそうでしょう!
 ともあれ、この文章は日ごろ慣れない言葉遣いなので、丁寧に読み進む必要があった。しかし、文語文と言うのは字数少なくして実に表現力のある言葉で、期待を裏切らないものであった。
 ことさらこの内容に驚いた。その昔、高校の国語の時間に聞いたことを思い出したが、この「舞姫」は鷗外自身の経験に基づいていたのでは。とすると、彼もなかなかやるな。
 ドイツへの管理留学生だった主人公は、その地の日本人仲間との付き合いが少なかった。ふとしたきっかけで、現地の貧しい母娘と知り合う。二人の生活を助けるうちに、次第に親しくなって同居するまでになった。口さが無い日本人の通報により、彼は官費留学生の身分をはく奪されてしまう。
 しかし、友人の計らいで新聞者の現地報道員として滞在し続けることができるようになった。そしてまたその友人によりドイツを訪問中の大臣の通訳を仰せつかり、大臣に評価されて共に帰国を進められる。しかしその時、ドイツの青い目の娘のお腹には彼の子供が宿っていた。
 その彼女を振り切って日本に帰ることのできないでいる彼に代わって、友人がドイツ娘に彼の帰国を話してしまう。それを聞いた彼女は裏切られた愛の深手に気がふれてしまう。
 主人公は結局日本に帰り、友人に感謝しながらも当時を振り返って唯一その思い出に友人への恨みをだく思いだった。ワシなら帰るだろうか。ドイツの裏街で一生を終えるかもしれない。
 いずれにしても、これが明治初期の作品か。と思うほど洗練された内容の文章だった。もう少し短編を読んでみよう。