天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「ジェノサイド」高野和明著

 ロングラン的に売れている本。今でも本屋で平積みに置かれているところがあるが、初版は23年の3月だ。
 SF小説と言ってしまえば、数あるSFの中の1冊のように聞こえるが、本がヒットするあらゆる要素を備えている。スリルとサスペンス。科学、政治もしくは政治家批判、そして愛情。
 で、どんな本か。心に響いた箇所に付箋を貼ったその文章をたどってみよう。
・あらゆる生物種の中でヒト亜科の動物だけが、治世を爆発的に発達させる方向へと進化の舵を切ったのだ。
・恐ろしいのは知力ではなく、まして武力でもない。この世でもっとも恐ろしいのは、それを使う人間なんです。
・世界各国に、戦争によって利潤を貪る企業が存在している限り、この世から戦争がなくなることはないのだろう。
・確実に言えるのは、現生人類は他の人類(ネアンデルタール人など)との共存を望まなかったということだ。
・歴史だけは学ぶな。支配欲に取り憑かれた愚か者による殺戮を、英雄譚にすり替えて美化するからな。
・ネオナチや白人至上主義者など、己の暴力衝動を政治思想に仮託する似非右翼には共通の心性がある。自尊心の歪んだ発露である。
・これが”人間という状態”だ。
・人は皆、他者を傷つけてでも食糧や資源や領土を奪い取りたいのだ。
・世界はこんなに美しいのに・・・この星には、人間と言う害獣がいる。
・「母親の愛情こそが、すべての平和の礎だよ」
・エマとヌースの子孫が築き上げる社会には、国家という単位はないのではないかとルーベンスは夢想した。現生人類には、決して作り上げることのできない境界線のない世界。かれらの故郷は地球、それだけだ。
 この最後のフレーズ。国家の存在が争いごとのもとであり、これが無くなるのがいいと思う自分の考えとピタリ合ったところが嬉しかった。こんな風に、本で主張する仲間を見つけたような気がした。こうなるとこの人の他の作品も読みたくなる。