天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

チグリスとユーフラテス 新井素子

 本棚に眠っていた本。新刊で買って、かなり眠っていた。

 SF小説コールドスリープという形で、長い間眠っていた人が起こされて感じたことなどが書かれている。ちょぅど20年本棚で眠っていた本が、起こされて私に語りかけるようだ。

 普段はSFを読むことはないのだが、1999年当時に本屋さんで目にして、タイトルとその時のキャッチコピーに魅かれてつい買ったと記憶している。SFだったので、ホイと本棚にしまって寝ていたわけだ。本の20年コールドスリープ

 賞を取った小説だけあって、読んでみるとなかなか面白い。20年のギャップを感じさせない。時代設定がはるか未来なので、20年の経過などは目じゃない。

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 人間が生きる意味を問う内容になっている。それも直球勝負の感じ。

 この社会で、子供を作って子孫を残すのは、子供がかわいそうじゃないか。

 人類を生存させるために、マイノリティを犠牲にすることの是非を問う。

 特権階級というのは何なのか、考えさせられる。

 こんなことも書いてある。

世襲制の〇〇があったという事実だけで、実質能力があまり問題にならなかった証拠になる。」これは今もそうだ。

 〇〇のところは、小説では王位とあるが、ここを政治家に置き換えると今の日本で、能力がなくても政治家になり、首相にもなっている奴がいる。そういう事実にぴったり。

 話の舞台である惑星ナインで、人類最後の子供ツナが次々とスリープしていた人を起こす。そういう流れになっている。スリープした人の時期はまちまち。いづれコールドスリープするときに、心身が好ましくない状態にだったので、その解決を未来に託して眠りについた人たち。眠りにつく時点で、周囲の人たちとはお別れするわけだ。

 最後に、話の中では4人目に起こされたのが、レディー・アカリと呼ばれる惑星ナインの母。創始者の位置づけの女性。女神とされていた。が、当然ながら人間。

 そのアカリと最後の子供として、独り生き残っていたルナとのやりとりが云わばクライマックス。

 生きることに大げさに意義を見出す必要などない。この世に生を受けたことに感謝して、精一杯生きることを楽しめばよい、というのが落としどころだろうか。

 この作家さんは、星新一氏のお弟子さんらしい。

 話が飛ぶが生前葬をやるという話題がFacebookにあった。なかなかいいアイデアかもしれない。だが遊びでなく、本人は死んでいくつもりでやらなくちゃいけない。どうせ自分も葬式の主人公になる日が来るとすると、自分が納得するようにそれを行い、死後のことも「遺言」とまで大げさじゃなくて、残るみんなにどのように生きて行ってほしいかというメモを書いて、そのありかを公表しておく。なかなかいいと思うがどうだろうか。