天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

Malice by Danielle Steel

 これは、Child abuseを題材にした小説だった。主人公の女性はその犠牲者で、13歳から17歳の間、父親に弄ばれる。元々母親に対する暴力もあり、その母が弱って死んだのが17歳の時。葬儀のその夜、父親の暴力と性的虐待は熾烈を極める。彼女は身を守るために母親の形見とも言えるピストルで身を守ろうとしたときに、暴発して父が死ぬ。
 これ以上の不幸はないというくらいの物語が展開する。裁判の結果、2年間の刑務所暮らしとなる。その刑務所では、囚人同士の虐待や上下限関係もあり危ない目に会うが、同室の力のある先輩女囚に庇護されて、無事2年を終わる。
 その後シカゴで更に保護観察の2年間を送るが、この間も彼女を食い物にしようとする輩と、支えてくれる人たちとが登場する。
 彼女は、自分の生活がなんとか立ち行くようになると、世の中で同じような経験を余儀なくされている女性や子供たちの力になるためのボランティア活動に参加をする。そこでも逆恨みを受けて、生死をさまようほどの怪我をする。
 それでも幸せなことに、彼女の過去も知った上で、彼女受け入れて愛する人が現れ、結ばれる。そう来なくてはダニエルの小説ではない。その彼は、弁護士から力を認められて政界へ出る。そこでも評価を受けて、次期大統領選への出馬キャンペーンに出る。そこで、その美人妻となっていた彼女の過去が暴かれる。シカゴ時代にやくざなカメラマンにだまされてドラッグで意識を失っている状態の時に、ポルノ写真を撮られていた。これをそのカメラマンが、政治家夫人の写真として雑誌に流していたのだった。
 この時は、さすがの優しい夫も彼女の正体を疑う場面があった。本当はそういう女だったのではなかろうかと。この時点では、彼らは子供もできていて、幸せな暮らしであったのにこの事件。大統領選のキャンペーンで、彼女が政治家夫人としてメディアに顔を出すことさえなければ、このようなことも起こらなかったのだ。
 それでも、この家族は愛情で支えあって、この事態を克服してゆく。
 アメリカに巣食う社会問題と、愛情が人間にいかに必要かをテーマにした、読みごたえのある作品。子供の虐待は、アメリカだけの話ではない。病的な人間はどこにでもいるし、ストレスの多い日本の社会では、子供を正常に愛することの出来ない親たちもいる。
 この小説の主人公が目指し、参加した活動。即ちその犠牲者を見つけ出して救済するという活動は、もっと日本でも行われてもいいのではないだろうか。