天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

Amazing Grace by Danielle Steel

 この本は、サンフランシスコの地震によって3組の男女の運命が変わってゆく様が描かれている。サンフランシスコの地震と言えば1989年が最近の大地震であり、この本はそのあとに起きたことを想定している。
 金持ちで恵まれた暮らしをしているサラ夫婦が、チャリティーショーを開催しているところから物語は始まる。そのショーに出演する若い美人のメラニー。その様子をカメラにおさめるために来ていた中年カメラマン。そして招待されていた小柄な修道女マギー。これらの人たちが主な登場人物だ。
 サラの夫セスは、ファンドマネージャーのような仕事で大金を稼いでいたが、実は投資家から集めたお金を一時的に流用することで利益を得ていた。不正に移動した資金を、戻さねばならないときに地震にために、被災地から外との連絡がとれなくなり、銀行で資金をもどす事ができなくなった。そのため不正が明らかになり、破たんする。セスは裁判の結果刑務所暮らしとなる。
 信頼を裏切られ、家も財産も無くなったサラは二人の小さな子供を抱えて、セスとの関係をどうしようかと悩む。幸い自活するための仕事は見つかったが。問題は夫との関係だ。
 サラは地震直後の避難所で、修道女マギーと知り合い、夫との関係について相談に乗ってもらっていた。マギーは許すことができるかを、よおく気持ちの整理をすることだという。
 ところでそのマギーは、ショーの取材から地震の取材に切り替えた中年カメラマンと恋に落ちる。修道女が恋におちることはあり得ない。が、自分の気持ちに正直な彼女はどうしようもない。最後は修道女の立場を離れて、カメラマンと一緒になる道を選ぶ。ここに至る二人の描写もなかなか読ませる。カメラマンの方はバツイチで、昔捨てた形になっている息子家族と元の妻に会う場面などもある。
 また、美人スターのメラニーは、母親の管理監督のもとにスターに育て上げられ、支配されていた生活を送っていた。その彼女が地震の時に、ただ避難所で時間を過ごすことに飽き足らず、ボランティアの手伝いをする。そこにボランティアで来ていたトムと恋に落ちる。地震騒ぎが一段落した後も彼女はボランティア活動を自分の意思で行うようになる。そのことや、芸能界とは別の世界のトムとの交際に反対していた母親も、次第にその両方を認めるようになる。
 さて、エンディングは、サラが子供たちを連れて収監されているセスを訪問する場面だ。セスのような経済犯は比較的ゆるやかな監視の刑務所にいるので、刑務所内の庭で家族でピクニックのように食事をすることができる。そのような行動を通じて初めてサラは自分がセスを許していることを実感する。これがAmazing Graceと言うわけだ。
 文章の中で、サラが夫の不正のために全てを失うという激変が起きたことを「ヒロシマが起きた」という英語の表現の箇所があった。これはどう受け止めたらいいのだろう。サラの身の上に降りかかったことの大きさを表現したいのだろう。米語ではHiroshimaという一語が人を不幸のどん底に落とすことの代名詞となっているのか。何かしっくりこないものがある。