天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「シャリマール」

 甲斐大策という人の本。アフガニスタンの人々のことを書いた本だった。あの中村医師が日本人としてそこで活動されているが、そこに暮らす人たちの生活や恋を描いた物語が5篇収められている。その地域に住んでいる人たちの目線での話し。
 中村医師は、もともとらい病患者の治療に行ったのだった。その地域にその病気の患者が多いと言うので赴任された。今はこの病気は落ち着いているらしいが、5篇の物語の中には、この病気の人の愛の物語が入っている。悲惨なだけに美しいと思ってしまう話し。お話なのだけれど、現実にある環境の中での物語だ。
 時々自分は最期はシルクロードのどこかでいなくなるように消えたい、などと冗談めかして言っていたその様子が、現実のように書かれている話もあった。グリスタン(花園)という題の物語。らい病に侵された二人が道端の水たまりで恐らく最後の時を迎えるのだろうが、救われるのは二人一緒にいるというところだ。まだ名前も無い小さな子供は、誰か旅の人に拾われることだろう。
 こんな物語を書く甲斐大策という人はどんな人なのだろう。昭和12年大連で生まれ。イスラム教徒になったているらしい。
 5篇のうち2編はインドが舞台だった。インド、パキスタンアフガニスタンと繋がっている。長い歴史の中で人は動き、入り混じってゆく。国などと言う仕切りができたのは最近のこと。
 この地域の文化では、というよりイスラム教の世界では男女の交際が西洋に比べてオープンではない。女性は家に従属するような地位にいるが、その実家庭では実験を持つ。そんな様子は中村医師の文章の中からもうかがえる。そういう風習の中で暮らす実際の人々を見るようだ。そういうしきたりの中での男女の愛情物語は、悲しいようで美しくもある。
 もう一冊この人の本を読んでみよう、と言う気になってしまった。