天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「中国の地下経済」富坂聰著

 昨年の9月に発行された本。中国と言えば、黒幇とか蛇頭と呼ばれる裏社会が存在する。この本のタイトルからは、そのような社会で動くお金のことが書かれていて、よってもって中国のネガティヴな面を浮き彫りにしているのかと思った。が、そうではなかった。
 確かに、裏社会は存在し、そこに係わって大きなお金が動いていることは事実だろう。しかし、この本で述べられている趣旨は、主に地下金融即ち、正式な銀行以外の組織による資金融資のことだ。そのようなお金を単に不正なお金として述べているのではなく、中国社会にとって、特に庶民にとっては頼りにならない公的制度や資金よりもずっと身近な、生活に密着したものだということが書かれている。
 実際、表の経済指標としては把握できないようなお金の動きが、中国庶民の間では当たり前に流通している。
 たとえば、農民工がローンを組んで部屋を買うなどということは難しい。国営企業に勤める人なら、銀行の審査にも通るであろうが、農民はそう簡単ではない。一族郎党、親戚縁者からお金を借りまくって住む部屋を買ったりする。そこに不足が生じると、ちょっと貸してくれるのは銀行ではなく、民間金融だ。それは正式に認められる金融機関ではないので、実情は分からない。日本の昔にあった頼母子講のような面もあるらしい。
 地下金融の資金の出所が、不正によるものであることが問題であるが、そのお金が庶民の生活維持に役立っているという皮肉な現象が続いている。その規模は把握ができない。表向きのGDPという数字は、表社会の数字のみで、地下経済の数字を含めると、中国の実質経済規模は相当大きなものになる。
 それにしても、不正による富の偏在がある限り、庶民の真の経済的平等にはほど遠い。必要悪として認めてしまうのもどうかと思う。急激な取り締まりを試みる動きもあったが、庶民の支えにもなっていることを考えると、やはりソフトランディングで是正されてゆくことがいいのだろう。