天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「マボロシの鳥」太田光著

 お笑いコンビ、爆笑問題太田光氏の書いた本。お馴染みブックレビューでの推奨本であり、彼がテレビ番組で色々な識者に鋭いインタビューをする様子が気にいっていたので、彼の書く文章は読んでみたかった。

 この本には、表題作の「マボロシの鳥」を含めた9編からなる短編集だ。本の帯にビートたけし氏が「おいらより先に直木賞とったら許さないからね」とのコメントで絶賛している。私はむしろ芥川賞の候補だろうと思うのだがどうだろうか。今年は両賞ともダブルで受賞者が既に決まった。
 9編のうち、最初の「荊の姫」を読んだ直後は、なんともほめようのない物語だなというのが正直な感想だった。先に読んだ家内もこの1作を読んだ時点で「がっかり」という印象を持ったようだが、読み進むと印象が変わる。
 はっきりと主張が感じとれる。というか著者の人に対する思い、あるいは人間社会に対する諦観の中でなお、人を信じて人にエールを送ろうという愛情が感じられる。中には、話をするのが本業である彼らしく、講談調の書きぶりのものもあり、テンポよく読めるのもいい。人気タレントなので、なかなか物を書く時間が取れないだろうと思うが、よく書いていると思う。
 この本は彼の小説デビューだが、次にどのような本がいつ出るのか楽しみ。