天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

アーサー・ビナード講演会より

 アーサー・ビナード氏は詩人だが、似て非なる職業のコピーライターが嫌いらしい。嫌いな理由は、いらんものを売るために庶民を惑わす言葉を並べるからとのこと。氏が個人的にいらんものとしているものに、シャンプーがある。
 「髪を洗うには、普通の石鹸で十分でしょう。シャンプーとして売っているのは臭いがつけてあるだけでしょう」ということだ。彼はずっと石鹸で頭を洗っているけど、頭の毛が薄くなっていないし、髪もやわらかだと言う。リンスの代わりに酢を少量湯に溶かして仕上げに使っているとのこと。資生堂にお世話になっているのに、申し訳ないがとの前置きでシャンプー攻撃をしていた。友人の家でお風呂を借りたら、その家族がそれぞれ自分専用のシャンプーを使っていて、お風呂の棚がシャンプーだらけだったとか。みんなキャッチコピーにだまされている。
 いらないものの中で、最たるものがプルトニウムであり、これを製造する原発だ。1997年1月に東京電力から「未来へのパスポート」と題した子供向けの小冊子が出されている。この中に「地震なんてへっちゃら」などと「嘘」ばっかり書かれている。この冊子の文章を作ったのは、どうせ大手広告代理店のコピーライターであろうということで、コピーライターがお嫌いなのだ。
 詩人 VS コピーライター。 確かに「いらんもの」を売りつける。あるいは、人をその気にさせる言葉を綴るのがコピーライター。そしてそれで報酬を得ている。お金をくれる人のために何でも書く。そうか?
 全国の、いや世界中のコピーライターの方のために代弁すれば、誰でもがお金のためにどんな目的のコピーでも書くということではないだろう。宣伝すべきではない事柄の仕事はお断りする人だっているはず。糸井重里さんはどうだろう。
 ところでその冊子には色々なことが書かれているらしいが、原子力の歴史の記述がある。
 そもそも1985年にレントゲンがX線を発見したところから、放射線の歴史がはじまる。キューリー夫人はこの放射線を研究してノーベル賞などをもらったが、夫とともに被爆して白血病で亡くなっている。その後、1905年にアインシュタインが原子が核分裂する時に強大なエネルギーを放出することを予言する。これを実験で成功させたのがイタリア人のフェルミという天才学者。この成功を輝かしいことのように褒め称える言葉が東京電力の冊子に書かれている。このことが許せない、というのがアーサー・ビナード氏の怒りなのだ。ちなみに、世界最大のウソツキ広告代理店はホワイトハウスだそうだ。
 このフェルミと言う人は、イタリア人であるが奥さんがユダヤ人であった為に戦時下での迫害をのがれてアメリカに亡命した。その亡命先でマンハッタン計画に参加し、そこで「立派な」功績を残したと言う訳だ。
 マンハッタン計画というのは、アメリカ国民をだまして、秘密裏に膨大なお金を使って進められた研究開発。そこにフェルミが亡命してきたのは飛んで火に入る夏の虫。ようこそいらっしました、ということだったとか。
 このマンハッタン計画というものについても、アーサー・ビナード氏の怒りはぶつけられる。どのようなことか、それはこの次の書こう。