天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

ラスト・ラン

 雨模様の東京を後にして、車は中央高速を山に向かって走る。荷物も無く、一人で車を走らせるのは実に軽快だ。笹子峠のトンネルを抜けると、天気は薄日すらさして来る。山々は、緑とオレンジのまだら模様の衣を着たよう。
 道路は渋滞も無く、エンジンは俺の右足のアクセルワークに的確に反応する。今日もいい走りをする。高速道路を降り、ゴルフ場までのフルーツラインという名の、いつもの慣れた道を走る。この道は、季節ごとに、サクランボウや桃、なし、ブドウなどが収穫される畑の中を走る。今は、所々に柿の木が残りの橙色の実をつけているのみ。
 今日まで俺の足だったこの車は、今日のドライヴでその役割を終える。車は、なぜ手放されるのか知る由もなく、その持てる機能を十分に発揮しようとする。しかし、7年半という時の経過と、14万キロを越す走行をしてきた体は、若者のような新車とは比べるべくもない。
 人の体も同じだ。手入れをし、いくらいたわって使っても、鍛えてやっても、いづれ役割を終えなくてはならないときが来る。俺はまだ、今日もゴルフをして遊んでいる。仕事についても、まだ何か意義のある、自分でやりたいことをやり続けよう、という意欲はある。しかし、終わりの時は確実に来る。その時まで、走り続けて行きたい。この車もそうだろう。できれば、この目で最後を見取ってやりたかった。
 まだ十分に走るこの車は、明日ディーラーに引取られる時には、「なぜだ?」と思うに違いない。元気な老人たちが、年齢を理由に仕事を与えられないのと同じようだ。
 しかし、元気な老人たちがボランティアで活躍するように、この車もまた、世界のどこか違うところで役立つに違いない。さらばだ!

 *明日、新しい車が来るので、今日は愛車を駆ってゴルフに行った。最後の走りを楽しんだ。思い切りキザに書いてみた。