天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

小説外務省 孫崎享

 この本は、「不思議なクニの憲法」という映画を見た時に、映画館で販売していたものを購入したものだ。著者の孫崎さんがこの映画に出ており、映画を見てこの人の書いたものを読んでみたいと思った。
そして、こういう本を書く人がいてよかった、というのが感想だ。

 まず、官僚体制の中で比較的リベラルと思われている外務省ですらこういう状況。つまり、官僚的で個人の考えで行動することが許されない。意見を勝手に発表することも出世に響く世界だ。官僚の既得権や利権を維持することが優先されており、本来国民のために行動するという発想がどこかに置き忘れられている。
 そういう中で、元気に発言する主人公。時代背景は2022年なので、全体としてはタイトル通り「小説」つまりフィクションというわけだが、本が出版された2014年までのことについては、著者の知り得る事実が書かれているようだ。中に、主人公の先輩として孫崎氏自身が実名で出てくる。
 この本は、外務省の実態を露わにしながら、実際の状況を国民に知らせようとしない体質が、民主主義の危機につながっていることを警告している。情報コントロールするのは日本の政府や官僚に限ったことではない。ウィキリークスでCIAの実態をリークした人は米国にいられなくなっている。
 日本のメディアのように政府の意に沿った情報しか流せないとしても、今やSNSを上手に利用することで情報発信ができる。民主主義の危機を乗り越える工夫をしようという呼びかけであり、体制に甘んじて自己の利益だけを求める生き方など何の意味もないという価値観についても再三触れられている。孫たちの世代が幸せに暮らせるには、目先の利益ではなく誰もが幸せになれる社会を残すこと、そういうことを言ってる本だと理解した。