天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

草原の実験

今日は午前中に出版社に行く予定だったので、午後は映画でも見て帰ろうと思い、前回行った社会派映画の渋谷イメージフォーラムをチェックすると「草原の実験」をやっていた。実験とは核実験だろうと、且つポスターの小女の顔立ちから中国の現代映画又は中国を舞台にした映画だろうと思ったら外れた。

映画のタイトルや俳優の文字がロシア語だった。それでも実験は核実験だった。中国でなく、ロシアのいや当時はソ連の核実験なので、中国より昔の出来事だ。アメリカが砂漠で核事件をしてから、威力を試しに日本に落としに来た。ソ連だからその直後だろうと調べてみると、1949年が最初らしい。中国共産が内戦に勝利したころだ。つまり中国はまだそれどころではない状態だった。
ソ連が核実験をしたのはセミパラチンスクという場所で、カザフスタンに隣接する地区だ。それで映画の主人公たちはモンゴル的なアジア的ないわゆるカザフ族の人たち。そういう顔立ちだったが小女はきれいだった。
いずれにしてもロシア映画は初めてと思う。実際最近になって、次に外国語を学習するとしたらロシア語をやってみたいと思っていた矢先にロシア映画。言葉の感じを聴きながら字幕を見るのかと思ったが、ロシア語が聴けなかった。吹き替えということではなく、セリフそのものが無かった。
無声映画ではない。風の音、雨の音、車の音や生活音はすべて自然に聞こえるが、会話が無い。考えてみれば、毎日の繰り返しの暮らしで、しかも草原の一軒家で周りには何もない場所に父と娘が二人でいればことさら何も語る必要がない。近隣の青年とのやりとりも、その行動を見ていれば状況はわかる。そんな何でもない草原の暮らし。父は毎朝トラックに乗って働きに出かける。どこに行くのか。ある晩、雨の中軍隊の訪問を受け、父の車といい体といい、放射能探知機で検査を受ける。車と父の体は激しく反応する。核燃料でも運ぶ仕事をしていたのだろうか。
具合の悪くなった父を兵隊の車が連れ去るが、ある晩突然戻ってくる。それから間もなく、父は亡くなる。美しい一人娘は旅立とうとするが、父の車の燃料はなくなり、歩いてゆくと鉄条網で広い草原が区切られて行きどまりになっている。
家に戻って独り住む娘を、近くの青年が嫁に望むが、彼女は行かない。町から来たらしい白人の青年も娘に恋をしている。二人は娘を取り合う。そんなのどかな日々、突然大きなきのこ雲が立ち上りすべてを吹き飛ばしてしまう。
まだ原子爆弾がどんな破壊力があるかわからないで実験したころの出来事。セリフの無い映画であるが、言葉があるよりむしろ強烈に核廃絶を見る人の心に訴えて来る。