天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

THE EARTH by Emile Zola

 18世紀の作家がよくもまあこのような作品を書いたものだ、というのが読後感。原作は勿論フランス語だが、Douglas Parmeeと言う人の英訳版を読んだ。

 ストーリーの時間の流れとしては、Fouanという土地持ち百姓が年老いて、引退してから死ぬまでの間に起きるさまざまのことが描かれている。

 自分の土地を子供たちに分割して贈与し、最後には家も売り払ってしまい、それらから得られる配当で生きて行くことにした。当時のフランスの農家の庶民の生きざまが見えて面白い、というのが読み始めの印象であったが、西洋の庶民は中国と違って儒教文化が行き渡っていない。従って、親を敬うという概念がここにはない。土地を分け与えられた子供たちは、兄弟の間で自分がいかに得をするかを考え、親ともあくまでも利害関係で動く。皆が皆そうではないにしろ基本的な発想はそういう感じだ。そういった骨肉の争いにより、若いフランシスはよそ者の妻になりその子供を身ごもったが、姉夫婦の手にかかって死んでしまう。それでも死ぬ前に姉夫婦を告発することはしない。すれば、確実に姉たちはギロチンにかけられる。それをしなかったということは、一族を守ったということだ。

 奔放な性と親を敬わない庶民ではあるが、一族を護ろうとする意識はとても強い。ここは中国の人たちが一族郎党助け合って生きてゆく姿と同じだ。血は水よりも濃いいのだ。遠くの親戚より近くの他人、ということわざが日本にはあるが、この物語は親せきはみな近くにいる。中国の人たちも基本的にはそう。そして出稼ぎに行く場合も親戚や同じ村の仲間たちが連れだって町に出て行き、そこで助け合う。

 18世紀終わりごろの当時の時代背景も面白い。同じ農業でも、アメリカは違うらしいということが中で話されている。欧州では農業の歴史も古く、一族が代々受け継いだ大地を大切にしているのにくらべ、アメリカは新しい広い国土を使い捨てのようにして農業をしているということだった。

 一族を護るという行動は、個人主義の行き渡っていない世界においては共通したことだろう。中村医師が活動しているアフガニスタンもどうもそのようだ。人間の幸福を一概に定義づけるのは難しい。