カルチャー・ジャマー
カルチャー・ジャマーという聞きなれない言葉がある。カレ・ラースンという人が「さよなら、消費社会」という本に書かれている。世界中のメディア活動家のネットワークだと本人は書き出しで紹介する。これだけでは何の事だかわからない。
訳者のあとがきでは、「カルチャーをジャミングする」を、「現状を想像的破壊する」意としている。ジャミングする人がジャマーだ。私はまた、「文化をジャマする人」のことかとひねってみたが、これも当たらずとも遠からず。
カレ・ラースンとは変わった名前だと思ったら、今はアメリカ在住のようだが、1942年エストニア生まれ。これだけて色々苦労した経験もあったろうと想像するが、問題はそういうことではない。
前にも少し書いたが、「さよなら、消費社会」というタイトルが自分が考えるこれからの価値観に近いものを感じて読み始めたのだった。読んでみると、概ね考えが一致するようであり、更に啓蒙された感じがする。
一気に結論を言うと、現代のカルチャーは大企業の手先になり果てたメディアが作りだしたもので、その流れに乗っていることに人々は気づいていない。大企業というのは、物を売ることで利益を得る。そのことで儲かるのは企業である。一般の人々は、カッコイイ車や、しゃれたブランドの着物を着ることでクールだと思っている。思わされてしまっているというわけだ。そういう動きの結果、地球の資源を不必要に加速して消費する流れを作ってしまった。
メディアの罪は大きい、とカレは考える。そのことにきっちりと横やりを入れて、その流れを変えさせようというのだ。
このままでは、地球の資源は早晩枯渇してしまう。消費の伸び=経済成長であるとして、GDPなどの数字を論ずる経済学者に反省を求める。真のコストとは何かと考えるくだりでは、原発の費用はその核燃料のゴミの処理費用を含まなくてはならないはずだ、と説く。ここのところは大変重要だ。
政府及び東京電力は、原発を安価なクリーンエネルギーとしてきた。放射能のリスクがあっても、原発は必要悪だなどと分かった風な口をきく識者ぶったヤツまで現れるに及んではなんともはや。あの吉本隆明までがそのような無知なことを言っているらしい。(本屋の立ち読みから)
そういうことを暴きだして、世の中の、メディアに作られたカルチャーの中に無意識に浸かりきっている人達の眼をさましてもらおうというのが、カルチャー・ジャマーの活動と言うわけだ。なかなか腹をすえて掛かることが求められるが、原発が必要だと考える人や、憲法の改悪を進めようと言うのがバカげたことであるということを少しでも伝えてゆくだけでもいい。何かしなくては、残る時間を無為に過ごしてしまうよりは、出来ることを少しでも。という風に考えさせてくれる本だった。ちなみに、彼の仲間はこのようなサイトを立ち上げている。
http://www.ourplanet-tv.org/