天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「世界中のすべての夜」遅子建著

 中国現代文学第5号に収録されている、遅子建の中編小説。中央大学の同人誌であるこの文集のおかげで、中国の現代作家の作品に触れることができる。いくつか読んでいて、現代中国の作家たちは政治色のあるものが書けないにしても、やはり中国ならではの小説が出来上がっていると感じる。この小説は、舞台が炭鉱。粗悪な設備の炭鉱で男たちは命を落とす。それを目当てに結婚し、高額な生命保険をかける女たちがいるという。恐らくこれは本当のことだろう。
 頻繁に起きる炭鉱事故で、犠牲者が9人以下だと小さな事故という扱いで、管理者は報告責任も無いらしい。小説では、10人目の犠牲者が炭鉱の幹部により事故の犠牲者でなく、単なる行方不明者とされ、文字通り闇から闇に葬られたことが書かれている。その妻は子供を抱えて、幹部たちからもらった多めの口止め料で荒れた生活を送る。飼い犬は毎日主人を炭鉱に迎えに行き、周りから哀れがられる。日本にもそういう犬がいたな。
 炭鉱と言えば、先週見た山本作兵衛さんを思い出す。画文集「炭鉱に生きる」という本が出ているので買ってしまった。これは日本のもはや遠い昔だが、中国の炭鉱は現在の話し。庶民が生命保険などを買うようになったのはついここ10年以内の話だから。
 こういう具合に、中国現代小説からは時代を反映した、中国ならではの様子を知ることが出来る。