天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「日本辺境論」内田樹著

 読後の印象としては、「この著者は大した学者だ」というもの。あるいは思索家か。いやはやり学者の方が適切な表現かと思う。さすがブックレビューの進行役のうち、二人の人が奨めていた本だけある。

 本は新書。帯に新書大賞2010第1位とあるが、さもありなん。隣に「菊と刀」を並べたのは、本書の中で数多くの本を参照されているなか、唯一この「菊と刀」を所有していたので並べてみた。こちらの本は古い本で、学生時代に大学の近くの本屋で購入して少し読んだかどうか。忘れられていたのを、この間本の整理をしていたときに、また読んでみたい古い本としておいたものだった。
 この「菊と刀」からは、捕虜になった日本兵は、尋問されるとペラペラと日本軍の内状を話してしまうということが書かれており、日本人の性癖を特徴づける事柄として引用されていた。
 引用されている本としては、司馬遼太郎さんの「この国のかたち」にも触れられており、これも2冊ほどは持っているのだが、まだ読んでいない。
 次の4つの章建てになっている。
1.日本人は辺境人である
2.辺境人の「学び」は効率がいい
3.「機」の思想
4.辺境人は日本語とともに
 どれも興味深くい視点で日本人のことが書かれているが、中に哲学論のような部分があり、基礎知識が無いと難しいところも少しあった。それは、著者が意図的にそうしていることが、最後の章で述べられている。
 日本のことを「辺境」という地理的位置から見て、文化や社会、政治などを考察するのを地政学というのだと先輩から聞いたが、これはまさにそういう本だった。本書の命題は「地政学的辺境性が日本人の思考と行動を規定している」というものだと後段で明確にされている。
 最後のくくりが日本語のことになっているのが、日本語教師志望でもある私にとっては興味深かった。
 日本語の特徴は、表意文字表音文字のハイブリッド形であるということだ。ベトナムや韓国は以前はそうであったものが今や漢字が排除されて、表音文字だけであらわされるようになったので、このハイブリッド形という表記手法は日本語だけのものになっているろしい。このハイブリッドを使いこなすようになったこと自体が、日本の辺境性から来ているとのこと。
 改めて日本語教師の本たちが、そこのところをどのように捉えているのか見なおしてみると面白いかとも思う。そして内田氏の本をもう少し読んでみたくなった。