天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

10年前の中国予想本

 ジャーナリスト、ゴードン・チャンによって書かれた「やがて中国の崩壊がはじまる」という本がある。その冒頭の部分で中国共産党は5年から10年で崩壊すると書かれているが、今はまだ崩壊していない。2001年の本なので今年で10年。細かく言えば出版月から見て来年の秋までで10年だ。ノーベル平和賞問題、尖閣列島問題、南沙諸島問題等々、色々問題はあるが胡錦濤国家主席の後継者も決まったようで、まだ現体制は続く気配だ。
 従って、このような本は売るために奇をてらったタイトルで大した内容の本ではないと思っていた。従ってなかなか読み始めなかったが、読んでみると結構色々な角度で分析がされている。なかでも目に付いた一節;
 「いま、この国のどこかに現在の中国を終わらせる人物がいる。ほとんど表明されない、あるいは完全な形になっていない思想を、その人物は大胆に表明するだろう。現状に不満をいだき、深い洞察力を持っているか、あるいはただの向う見ずかもしれないが、その人間的な魅力と思想の力で、中国人民はよりよい方向へと導かれることだろう。」
 これを読んで、08憲章を思わないわけにはいかない。
 また、この本の第4章は「共産党はインターネットに備えているか」というタイトルで色々と実情が書かれている。主には<163.net>のことが書かれているが、インターネットの出現で情報統制には限界があることが明白になったということだ。そして、この08憲章はネット上に現れた。これをネット上で初めに見たときは驚いた。随分大胆な人がいるもんだと。そして、よくまあネット掲載ができたいるなと思ったら、書いた本人劉暁波氏は逮捕され、そしてノーベル平和賞候補となった。
 国家体制が変わるときのタイミングは、ソ連の崩壊、東西ドイツの統一、などヨーロッパでは割とあっけなく事が進展した例がある。さほど大きな混乱なく事が運んだ。しかし、経済大国と13億の人民をかかえる中国で、同じようにコロッと変わることがあるだろうか。あるとしたら、江戸時代の終わりの大政奉還のように現体制側が自ら宣言して変わる形を取ることになるのだろう。そうでなくては「革命」が必要になる。
 「改革」でなく「革命」となると、犠牲者もでる。改革であっても、皆が平等に良くなることはない。訒小平氏はそこのところを踏まえて「先に豊かになれるものから先に豊かになる」ことを是とした。即ち、一時的に不平等が存在する社会になることを容認しているのだ。改革も痛みを伴う。今、痛んでいるところかもしれない。
 この本のタイトルに含まれる「崩壊」と言う言葉は、「革命」などという言葉と同様に激しい言葉だ。しかし、徐々に徐々に変わって行って、元の姿がすっかり変わっても元の状態は崩壊したことにならないだろうか。
 中国の場合、国有企業というのが共産党と切り離せないものであり、そのこともこの国の問題であることがこの本には書かれている。しかし、この本の出版された後、2003年に中国はWTOに加盟し、外資により門戸を開いた。今では外国資本の会社、中国との合弁会社、純国有会社の概ね3通りの形態での会社経営が認められている。そこでは国有会社も他との競争力を持たねばやってゆけなくなっているはず。いつまでも共産党と二人三脚では立ち遅れる。
 10年前の中国分析本の各テーマについて、現状がどう変わったのか一つ一つを確認してみるのも面白い。最近における流れが見えるかもしれない。