The Kiss
Danielle Steelの小説。日本語で言えば「接吻」というタイトルになるだろうか。あるいは「口づけ」か。内容からすると、接吻というヘビーな表現の方が会っている。2001年の作品。2001年といえば彼女の最初の作品から30年近く経過している。即ち、かなりの年齢になってからの作品だが、恋愛にかんしてこの強烈な語りは大したものだと思う。もともと恋愛小説の売れっ子作家なので当然かもしれない。それにしても、アメリカ人だから書ける作品と思う。
さて物語は、恵まれていない夫婦生活を送ってきた男女の物語。ふとしたきっかけで、電話で話をするようになる。住んでいる場所は女がパリで男のほうがニューヨーク。アート観賞が共通の話題。その二人がロンドンで会う機会を持つ。14歳の病気の息子の看病に明け暮れている彼女は、ほんの数日の休暇のような旅だった。男とは、親しい友人同士のやりとりが続くが、ロンドンでの最後の晩、別れを惜しむ二人が夜遅くに車でホテルに帰るときにとうとう口づけに及んだその瞬間、二人を乗せたリムジンがバスに衝突されてしまう。
意識不明たなった二人は、ロンドンの病院でからくも命を取り留める。病院での経験が二人を別れがたい関係にする。そこから二人が結ばれることになるはず、という結末のはず、と分かっていながら途中、ハラハラしたりもどかしい思いをさせる展開。中身はあまり書かない。
それにしても、二人は離婚を経過して結ばれる訳だが、離婚という事実は欧米では普通にあることとして小説のストーリー展開になっている。日本でも離婚率は増えているらしい。昔に比べたら、女性が我慢している必要はないし、女性に生活力が出来て来たことが離婚しやすくなった理由だろう。それくらい、生活というものが結婚にまで影響を及ぼしているわけだ。
ダニエルの小説には生活感が無い。ひたすら愛の物語であり、たいていの場合、生活と言う面では恵まれた環境のなかにいる人たち。恵まれているはずが無い場合でも、生活関係はあまり書かれない。それでいて愛情というものが、人が人間らしく生きてゆくのに大切なものだということをきっちり語っている。彼女の書く愛情には家族の愛情も含まれている。今、Family Tiesという本が彼女のネットサイトで紹介されている。