天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

回教から見た中国 張承志

 この間初めて行った西安に、イスラム街という地域があってとても興味深く思った。その広さは、世界各地にある中華街の比ではない、かなり広い地区がイスラム系の商店街になっており、その一角に古来のモスクまであった。そういえば、横浜の中華街には関帝廟というのがあったが、やはり規模では西安イスラム寺が大きくて歴史もある。
 中国における回教は長い歴史がありそう。始まりは唐の時代にさかのぼるらしい。最近、イスラム教が関連する本を読んで、中国の回教のことも知りたくなってネットで探したところ、この本が出てきた。

 中国には回族と呼ばれる人たちがいる。昔、中国のカラオケ屋で「私は回族」という人がいたことを思い出す。興味深くまじまじと見たが顔形は普通の中国人で、ショールで髪を隠してもいない。なので、回族とは中国の少数民族の一種だろうくらいに思っていた。
 五族協和という言葉が中国にあった。wikipediaによると、中華民国北京政府が掲げていた漢族、満州族蒙古族、回(現在の回族ではなくウイグル族など新疆のイスラム系諸民族を指す)およびチベット族の五民族の協調を謳ったスローガン。ということだ。また「回族」の解説としては、古く唐の時代にアラビア人やペルシャ人が源流とある。
 要するに、回族とは人種的な意味での少数民族のことではなく、中国の歴史的な流れをくむ回教徒をいうらしい。唐の時代から中国の漢民族との血も交じり、今では顔かたちはエキゾチックな特徴は無くなっているのだ。回教徒すなわちイスラム教徒と言っても、ウイグル族やカザフ族とは民族的に異なる。
 この本を読んでいると、そういうことから書かれており、これは中国の回族を学術的に説明した本かと思ったら、後の方で著者自身が回族であることをカミングアウトし、清朝以来の近代中国おいて回族がどのように扱われ、生き残ったのかを説明している。回族の名誉のために。
また、中国においては宗教は根付かない中で、唯一回族だけがイスラム教を信仰する民族としている。中でもジャフリーヤ派というのは純粋に信仰を守る人たちである。
 著者は言う;
 近代から始まって、現在展開されている中国の不幸には、いろいろな原因が隠されている。内面からの原因が問われれば、無信仰、無宗教ということから恥を知らず祖国を裏切ることが、その一つに数えられると私は考えている。この意味で、信仰する中国人として、回教は貴重な存在であると言わせていただきたい。
 かなり強烈な中国人批判でもある。回族の人たちは、信仰のために命を捨てることは当然と考えている。しかし、民族同化の中でか主教集団の上層部には、時の政権、権力者側になって回教徒の宗教習慣にたがうことも受け入れてしまうものがいる。
 中国奥地では反乱が絶えないといったことのかなりの部分は、回教徒が自らの信仰を守るためということがあるように見える。
 ところで、著者の張承志氏は紅衛兵だった。そのことは本では触れていないが、回教徒として差別された少年時代を過ごしての紅衛兵ということは、文化大革命の強烈な推進派であったことと思われる。文革はつまるところ、権力闘争に利用されていたと考えるが、実際に抑圧されていた人たちには格好の憂さ晴らしの機会でもあったろう。
 古く唐の時代に中国に来たイスラム教徒が中国の文化に同化されずに、かたくなに信仰を守る続けた結果、「回族」と称される集団になったが、イスラム教徒はその宗教習慣をもって侮蔑されたり、否定されることが無いかぎりきわめて真面目で勤勉な生き方をする人たちだ。そのことが、時の権力者によって利用されたりということがあった。
 アメリカのいう「テロとの戦い」というのも、イスラム教徒のある一派を利用してテロ行為を誘発させて、軍需産業に仕事を与えているのではないか。そのことの裏取はもう少し研究してみる必要がありそう。