天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

23 格差をなくせば子供の学力は伸びる

 驚きのフィンランド教育と副題のあるこの本、素晴らしい内容だった。

 著者の福田誠治さんは、教育学者だ。この本は、PISAの調査で高い評価を得ているフィンランドの実態を調査してルポをし、日本の状況を解説してくれる本。そしてフィンランドに見習うべきという方針を持っている。
 PISAとは、Programme for International Student Assessmentの略称で、日本では国立教育政策研究所という公の機関が対応している。
 この本を手にした理由は、今までスウェーデンデンマークなどの北欧の国々が共生社会を実現していることを学習してきたが、フィンランドの教育と格差を策すことで学力が伸びるというタイトルに大いにひっかかった。
 最近、日本の学生たちの学力が落ちているといわれている。
 詰め込み主義の教育方法が限界にきていて、レベルアップしている北欧の国々は、子供たち一人一人が自分で学ぶ力を育てることをしていて、それがいいのだという。ではそれは具体的にどのようなことが行われているのかを現地ルポしている。で、その様子を具体的にわかりやすく読者に伝えるために、フィンランドで撮ってきた教室の写真が多用されている。この写真は効果的だ。
 ところで、子供の自主性を尊重しようという教育方針は、日本にとって目新しいものではない。
 敗戦後、日本の国の作り直しのために、まず平和憲法が制定された。そして、戦前の教育勅語もなんとかしなくてはならない。そして1947年の教育基本法。その第1条に教育は、「自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とある。これはもはや旧法で、2006年の新「教育基本法」では、その第6条に「体系的な教育が組織的に行われなければならない」と変質している。
 その結果の詰め込み主義、問題の答えは一つで、誰も同じ答えを求められる。教師はマニュアルから外れることが許されない。
 しかしフィンランドでは、教え方は現場に任されている。先生たちの意識も違う。日本も昔は意識の高い先生がいたものだが、デモシカ先生などと言われるような状況になったのは、教育行政のせいでもあったわけだ。
 そして今改めて、フィンランドルポを通して知識を押し込むのではなく、人を育てる教育の大切さを著者は主張しているのだ。