天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

もうひとつの核なき世界

 これは2010年10月に出版された本だ。つまり3・11の原発事故が起きる前に書かれている。であるのに、今読んでも原発を含めて核の問題が、分かりやすくかつ鋭く述べられている。
 オバマ大統領が、プラハで「核なき世界」と演説したことから、その後の豹変とも思える言動がどういう訳なのか。核兵器保有こそその数を減らしたものの、劣化ウラン弾によるイラクアフガニスタンなどアメリカが出兵した各地の放射能被害の実態を暴き、戦争ビジネスでもうける米国企業を告発する。
 元々は広島と長崎に投下された原爆。この時は放射能被害というものが一般に知られていなかった。アメリカ国内では、この原爆投下は戦争を早く終わらせる為の正義であると宣伝され、ほとんどの米国民はそれを今でも信じている。
 それが、イラク戦争から帰った帰還兵の多くが被爆した症状をもっていることが明るみに出るに及んで、放射能被害は対岸の火事ではないことに気付く。
 日本は、直接核弾頭を投下された唯一の国であるが、放射能による被ばくは、原爆開発時の核実験場附近の人達から始まっている。戦後、アメリカの核実験の場所にされた南洋諸島の国々の人々には、今も奇形の赤ちゃんが生まれる。
 日本の漁船、第五福竜丸被爆もあったし、ソ連チェルノブイリ原発の爆発でも多くの人達が被爆している。中国の核実験ではウイグル地区が実験場となりそこに住む人達が被爆者となった。
 そしてイラクアフガニスタンにおける劣化ウラン弾の使用だ。
 著者は、歴史教育の大切さについても書いている。私が育った中で受けた歴史教育では、第二次世界大戦で日本は負けたというだけで、中国やアジア地域への侵略がどのような形で行われたかなどということは一切学ばなかった。詳しいことは終わったこととして、知る必要もない感覚を私自身持っていたこともあった。
 歴史を正しく見ることで、同じ過ちを繰り返さない素地ができるのだろう。アメリカ人が原爆投下の背景と影響を正しく知ってほしいと同じように、日本人もその敗戦に至った過ちの経過をよくよく認識しておく必要があるだろう。そういう意味では戦争知らないから、というのは能天気過ぎる。
 日本からこそ、核ゼロに向けた動きを展開しようというのが著者の結びの主張である。そして福島原発事故が起きた。もう何をかいわんや。
 東京オリンピックまでに、原発ゼロを目指すべきだろう。