SILENT HONOUR by Danielle Steel
今回の中国往復の飛行機と電車の時間に読んでいた本。ダニエルの少し昔の作品。本も古本。表紙の真ん中に漢字みたいなものが書いてあるなと思ったら、日本人が主人公の話だった。
話は、太平洋戦争の時代に進歩的な親の奨めでアメリカに留学をしていた女性の話し。当時18歳。サンフランシスコに移住して暮らしている叔父夫婦を頼っての渡米だった。向こうの学校は寮生活だが、彼女が日本人であることでルームメイトからいわゆる人種差別を受ける。それでも頑張っているうちに、真珠湾攻撃となりいよいよ彼女は学校の仲間からひどい扱いを受ける。そのうち彼女だけではなく、カリフォルニア地域に住む日本人全部が収容所行きとなる。この物語の大半はその収容所に入る様子から、戦争中のそこでの暮らし、そして終戦で解放されるまでが書かれている。そしてヒロコは日本へ帰る。
という構成だが、ダニエルの小説なので当然ながら恋愛小説。サンフランシスコで大学教師をしている叔父の助手に若いアメリカ人ピーターがいる。彼は日本を一度訪問したこともある日本ファン。ホームパーティーで着物姿のしとやかなヒロコに一目ぼれ。しだいに親しくなってゆくのだが、そのうちに戦争が始まってしまう。ヒロコは日本に戻ることもできず、日本人キャンプ(収容所)に叔父家族と住むことになる。ピーターは叔父の後を継いで大学の先生をするが、毎日そのキャンプこ来る。大学の仕事を理由に実はヒロコに会いに来ていた。来るといつもキャンプ地内の遠くて人気のない草原まで散歩をしていた。そしてごく自然に若い二人はそこで結ばれる。当時の古風な日本の娘であるヒロコは、親の許しも無いなかではあるがキャンプにいた僧侶の前で二人だけで結婚式を挙げた。
日本に残っていた弟は空軍に入り、アメリカの叔父の息子は米軍に参加する。ピーターも志願してヨーロッパ戦線に送りこまれる。弟と従弟は戦死し、ピーターとは途絶えがちではあるが取れていた連絡も、彼がパリに入ったところで連絡が途絶えた。戦死の報告はない。そういう状況で戦争は終わるが、その間ヒロコはピーターの子供(男の子)をキャンプ生活の中で出産する。ピーターにはそのことが負担にならないように伝えていないままだった。
ピーターの行方が分からないまま、日本の弟が亡くなった今、両親の世話をしなくてはというので、子供を連れて故郷の京都に帰る。が、両親は疎開先で爆弾投下の犠牲になり京都の家だけが残った状態だった。しかしそこで、、、ダニエルはいつもハッピーエンド。
面白いのは、この小説では太平洋戦争で日本が降伏したのはレーバーデー(9月の労働節)となっていることだ。アメリカ人は、ミズリー艦上で日本代表が降伏文書に調印した日をもって戦争終結としている。天ちゃんが日本国民にアナウンスしたことなど知ったことではないらしい。
それと、日本人と日系アメリカ人が日系人であることで、言われの無い疑いを受け、収容所で大変な暮らしを強いられ、それまでに築き上げた財産なども二束三文で買いたたかれた。その様子を、ドイツのナチがユダヤ人にしたことよりもましだったというようなことが書かれている。アメリカ人感覚ではこの出来事をそのように見るのか、と感じた。
18でアメリカに渡ったヒロコは3,4年の間に大変な経験をし、恋もして、強いたくましい一人の女性になっていた。