天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

Honor Thyself by D.S.

 Danielle Steelの小説。タイトルを日本語訳したら「背筋をのばして」、「誇りを持って」、「汝の思うところを行け」とかいう具合になるだろうか。何か心に響く感動的な物語かと思ったら、やはりダニエルらしい愛の物語だった。
 主人公は50歳になるハリウッド女優。ご多分にもれず結婚遍歴がある。最初の夫との間に二児を設けたが、俳優稼業にいそしんでいるうちに、夫はロシア娘に持って行かれる。これは夫にとっても失敗だったのだが、その後パリで映画撮影をしている間に、パリの政治家と深い中になる。彼には妻子がある。パリ野郎は妾を持つことは普通のことらしいが、彼は妻と別れて結婚をすると言いながらも、結局仕事と妻から離れられない。
 失意の主人公は二人の子供を連れて涙ながらにロサンゼルスに帰る。そこで新たに再出発したところに優しい次の夫とめぐり合う。が、彼は3年目には病死してしまう。彼の死を看とってから、小説を書き始める。自分の事を書こうとするのだが、途中でパリに一人出かける。
 そこで、テロ事件に遭遇して九死に一生を得る。が、記憶が無くなってしまう。ロスに残った親友で彼女の秘書をやっている友人が、連絡がとれなくてパリまで出かけ、不明者として入院している彼女を見つける。反省した最初の夫や、成長した二人の子供も見舞いに来る。
 彼女は奇跡的に徐々に記憶を取り戻すが、そのきっかけは高齢者となったパリ野郎だ。その時点では、もう妻に先だたれ政府の要職からリタイアしている。それでもなお主人公のいわば元愛人が忘れられず、事故を知って見まいに来ていたのだ。記憶を失った彼女は、はじめは誰だか分らなかったが、いやな感じはしない。いろいろと話しているうちに、彼との記憶が戻ってくる。それほど心に深く刻まれた、哀しい思いと楽しい思いとの両方を与えてくれた相手なのだ。
 結局のところ、この‘ほぼ爺さん’になっているパリ野郎とよりを戻してハッピーエンドの物語。
 なんだかめまぐるしい愛の遍歴。普通一般の庶民には縁のない出来ごと。それでいて、先へ先へ読ませられる。高齢者になっても愛し愛されたいという思いが変わらないということか。どこがHonor Thyselfなのかというと、主人公の場合、結婚生活をしながら女優と言う自分の仕事を捨てたくなかった。そこにこだわったために、さまざま辛い思いをしているが、それゆえに色々な人と出会い、最後に年を経ても気の合った、一緒に生きて行ける相手とめぐりあった。よってもって、だから従って、自分を大切にして生きろ、というメッセージなのか。色々な意味で励まされる。