天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「中国の一日」

 この本はどこかで紹介されていたものを、ネットで探し当てて神田の裏通りの古本屋まで出かけて行って手に入れたものだ。もう1年以上前のことと思う。私の本だなに並んで、充分に熟成されたのでページを開いて読み始めている。
 冒頭に著者ないし編集者の茅盾が、編集の経過についてと題してこの本を制作した経緯について長めの解説がある。これによると、中国の一日とは1936年の5月21日のことであった。本の副題にある日付。この日に何があったのか、中国各地および海外在住の中国人からの投書(依頼に基づく)を集めたものだ。大そうな話ではなく、その日の各地の庶民の様子がどのようであったのかが綴られている。
 ところで5月21日という日付は中国にとって何か意味のある日に違いない。と思ってネットで検索してみるが、最初の方にはそれらしい情報はない。答えは本の中にあった。1927年のこと、湖南省長沙で国民党が中国の支配権を握るきっかけになった日らしい。「馬日」と呼ぶらしいが、世界史的はそれほど知られた日ではなさそう。ともあれそのような時代の一日ということだ。日本が好き勝手に闊歩していた頃とも言える。
 そして満州国が作られており、共産党が結成されて、国民党政権への抵抗がされていたころ。中国の各地から寄せられる文章の内容はどれも苦しい生活を生き抜いている様子が書かれている。中には牢獄からの手紙もある。今と違って牢獄から、しかも政治犯が外部に手紙を出すこと自体、尋常なことではない。そこを押して出している。自分たちの実情を外部にそして後々に伝えるために。その試みは達せられており、今の時代になっても当時を知ることができる本になっている。そして当時の青年達の中にはいかに勇気ある活動家たちがいたかということがわかる。
 その文章の言葉づかいは、あたかも数十年前の日本の学生運動の闘士たちのアジ演説の言葉遣いのようでもある。中国の彼らが先輩になるわけだ。そのような意気込みを当時の日本の学生たちは踏襲していたともいえるが、思えば少し古い時代のカッコよさをまねていたともとれる。
 ともあれ、一つ一つは長くない文章で、テーマも場所も状況も異なるので、少しずつ楽しみながら読み進める。