天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

グレイト・ギャツビー

 スコット・フィッツジェラルド著、村上春樹翻訳の小説。村上氏が感心して翻訳を手掛けた本と言うので、読んでみた。巻末の氏自身の感想を読む前に、私自身の感想を整理しておきたい。
 読んでいてすぐにわかるのが、この時代の古さ。日本は明治時代。舞台はアメリカ。物語の時代も、作品が書かれた時代も同じくらいだろう。古さを最も感じさせられたのは、豪邸にも一流ホテルにもクーラーが無いこと。特に今が夏で、クーラーの無い生活があり得ない中で、当時のアメリカの金持ち階級たちでさえ、クーラーが無く暑い夏を過ごしていたこと。
 とにかく、物語はラブストーリーであり、結末は悲惨なのであるが、そこに出てくる登場人物たちのやりとり、これが古さを感じさせない。人々の、男女の関係をめぐる純粋さと、夫婦間の仕方のない有りようなどは、クーラーの無かった時代も今も何も変わっていないということが不思議。
 その頃でありながら、そのような文章を書いていたということもスゴイ。そのようなというのは、今と変わらない人間関係の描写が生きいきと精緻に描かれていると感じることだ。原文は英語なので、精緻な表現には村上氏の翻訳の言い回しも一役かっていることであろう。元の英文を読んでみたい気がする。私の愛読しているダニエル・スティールの文は、平易な英語で見事に人間感情や心の機微を表現している。グレイト・ギャツビーの原文英語はいかがであろうか?
 ま、いづれにしてもそういった文章による表現力が評価できるということは、この本の良さは文学としての良さということになるのだろうか。