天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

JCC中国講座 高齢者大国

「高齢者大国 中国の社会福祉をめぐって」
講師:日本女子大学 人間社会学部 沈潔教授 

 人口の多い国として知られる中国は、当然比例して高齢者も多くなる。現時点では65歳以上の高齢者人口が1億5千万人を超えており、日本の人口より多い高齢者社会になっている。今日の講演のポイントを整理しておく。
1. 高齢化の速度の問題
 日本の高齢化が問題になった理由はその速度にあるが、中国も日本と同じくらいの速さで高齢化社会になるという。速度を具体的に見ると、高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)が7%から14%になるまでに要した時間の速さが報告された。日本が24年で到達したのに対し、フランスでは114年、アメリカで70年だったそうだ。そして中国もほぼ日本と同じ24年くらいで14%に達するという見込みだ。現在中国は12%まで達しているらしい。この速度が早いと、高齢者の福祉にかかわる整備が整わないうちに、年寄りが増えてしまうということだ。
2. 都市と農村の格差
 中国では上海が一番早く高齢化社会を迎えた。2000年までは高齢化の問題は都市部の問題であったが、以降は農村部の問題になってきている。と同時に都市と農村の経済格差が、高齢者福祉の問題においても浮き彫りになってきている。すなわち、都市部においては年金受給者も多く、老後の生活が保障される比率が高いのに対して、農村部では65歳を超えても収入は労働によらねばならない率が多い。
 しかし、このことは健康で生涯現役の農業家として働くことができれば、むしろ幸せなのではないかと私は思う。が、働かずに日がな公園で散歩をしたり、ダンスをしたり、日向ぼっこをしたり、地面に水で字を書いたり(最近のはやりらしい)できるのと、働かなくては食べられないという状況との不平等な点は問題であろう。
3. 傷病者対策
 高齢であっても、元気ならばいいわけで、何か人の役に立つ仕事をして社会貢献する高齢者はたくさんいる。しかし、加齢とともに病気になったり、認知症になったりする。そこで所謂介護の必要性の問題が出てくる。日本では介護施設が出来ているものの、介護認定の問題とか、施設の不足、設備の不十分さなどが問題になっているが、中国ではどうか。まだまだ家族中心の生活を送る中国では、在宅介護が中心のはず。とはいえ、少子化の進行とともに核家族化が進み、家族による扶養機能が年々低下している。それでも、私の知る限りでは親に楽をさせたいと働く人々は多い。都市部では核家族化している率が高いが、農村部ではまだまだ家族が一緒に住んで、助けあって生きている構図が残っている。そのような環境にあるお年寄りはむしろ幸せではないかと思う。
 進む高齢化社会への対策を市場主義に任せて放っておくわけにはいかない。中国政府として取っているいくつかの施策のなかで、2001年の「星光計画」と2005年の「中国介護事業発展計画綱要」というのが具体策として有効に作用しているらしい。
 前者は、地域コミュニティによる互助会的な対応促進策で、福祉センターのような設備を建設と初年度の運営は国が保証し、次年度からは地域の運営に任せるというもの。2年目以降が勝負だな。
 後者のほうは、各都市に介護計画の提出を義務付け、その計画に沿って実際に実施されたかどうか点検をするというもの。実際、北京市は2010年までに20の介護施設を作る計画を出したが、現在20か所も出来ておらず、大きな問題となっているらしい。市政府の責任者の処罰とかそういう問題になるのかもしれない。
4. 都市部の実情など
 講演の聴衆者の中で、北京生活を経験した人がいて、中国の友人の家族の介護施設にいた状況をじかに見てきた様子を話していた。その話によると、介護施設に入院したものの介護する人は、田舎から出てきた出稼ぎ者で字もろくに読めないで、介護に必要な技術などは身につけておらず、住む場所もないので病室に寝泊まりして、食事もする。これが24時間介護ということらしい。これは2年前の話。講師からは、今は無資格者の介護は禁止されているということだが、なにしろ中国ですからそう簡単に制度が守られるとは思えない。
 また、高級介護設備が商業ベースで建設された時期があった。海の見える高台の高級マンションのような建物が建設されたが、入居率は40%程度だったそうで、今はもっと減っているらしい。このような商業ベースの施設に関しては取り締まりや、設備の基準というものは一切ないとのことで、中の実態はよくわからないらしい。危ない。
 
 ところで、講師の先生は中国から20年前に日本に留学生としてきた方で、以来日本で研究や教鞭を続けた人で、この4月から母校の日本女子大の教授として活動している。それだけ長く日本にいても、今日の講演での話し方は母語の中国語影響を受けた話し方だった。一方、質問をされていた上海出身のバイオリニストは、ご自身でそう言わなければとても外国人とは思えない話かただった。日本語教師の影響だろうか?