天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

カムイ伝講義

 カムイ伝というタイトルの漫画があった。いやまだある。それを材料にした大学の講義があり、その内容をまとめたのがこの本。法政大学の田中優子先生が書いている。元の漫画については、タイトルと作者の白土三平氏の名前くらいしか知らなかったが、これは江戸時代のエタ、非人の暮らしぶりを書いたものらしい。当時の社会の庶民の逞しさを表現していると言ってもいいかもしれない。
 この本を読んでいて感じること三つ。
1.大学の教材が漫画か
江戸の文化を知るということは、大切なことであり大学のしかるべき学部の授業の中で学習し、研究することはいい。しかし、なぜ教材が漫画なの?という気がとてもする。最近の若者は、好きな漫画で興味を惹かれなくては学習もできないのか。昔は研究といえば、漫画どころか、外国語の本や難しい本を読んだのではなかったか。漫画と聞いただけでこのような印象を持ったのは、古い人間か。
2.「たかが漫画」ではなく、今や世界に冠たる日本のアニメ
 日本の漫画は米国でも中国でも大層な人気だ。今や日本の文化として世界に認められている。このカムイ伝も日本の文化として世界に誇れる作品。だとすれば、これを大学の講義に使うということは当然にあってしかるべきということになる。カムイ伝講義の中では、原本の創作性、即ち史実とは異なる部分があることを指摘しながらも、江戸文化の解説を離れて漫画に感動している記述もある。結局のところ田中先生も白土三平氏のファンなのかもしれない。
3.農民文化というものを垣間見た
 日本の古い本。紫式部源氏物語とか、枕草子などという本に書かれていることは、貴族の文化であった。しかし、貴族などはほんの一握りの人たちであり、大半は農民であったはず。では、そこにあったであろう文化はどのようなものだったのか。ただ田や畑を耕して、食にありつき、地主から搾取されることに耐えて甘んじていた集団だったのか。そこのところを知りたかった。中国の農民の文化というのも知りたいが、この本は日本の農民や非人、そしてエタとよばれた人たち。皆庶民であり、役割分担があったのだ。その記述に感じるのは、文化というより文明に近いかもしれない。しかし文化も必然的にあった。それが多少なりとも分かったのがとてもよかった。
 結局のことろ、日本人の祖先の大半は農民であり、漁民であり、山に住む人々であったはず。そこにも中国からの文化・文明の影響はあった。その日その日をよりよく生きることを真っすぐに行っていた素朴な人たちが我々の祖先だったのだ。
 この本、よくよく読んでみるとさすが大学の教材だけあって奥が深い。漫画の解説本のようであり、この本の解説も必要なくらい深いものがある。