天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

中国映画「芙蓉鎮」

 先月中国に旅行した方が10元で買ったというDVDを借りた。二時間半以上の長めの映画で、文革時代の庶民を描いたもの。文革開始前から、ちょうど終了するくらいまでの期間に、芙蓉鎮という場所で起きた事を映画化している。
 芙蓉鎮という場所の名は架空のもので、描かれた内容も実録と言うわけでは無いだろうが、モデル的なことはあったに違いない。あるいは中国の至る所でこのようなことが起きていたので、材料にはこと欠かなかったといったところだろう。
 主人公の玉音は、夫と二人で米豆腐というものを食べさせるお店を営んでいた。党の地区幹部の人からクズ米を分けてもらい、夜のうちに材料を仕込んで昼に商売をしていた。彼女の美貌と、愛嬌とサービスで店は繁盛し、二人で貯めたお金で家を新築することができた。
 当時の中国は私有財産が制限され、農村での生活は人民公社が中心となっていた中で、彼女の成功は周りのねたみを買い、党への密告をありで家は没収され、党に反発しようとした夫は死に、彼女は黒五類とされて人並みの生活ができなくなってしまう。また、文化人であった為に同じく黒五類の仲間にされていた男と助け合って生きてゆくうちに二人は結ばれる。
 文化大革命の頃の出来事を色々と本で読んだりしていたが、それを映像で目の当たりに見た感じだ。共産党の地方幹部の堕落と腐敗、その中で庶民思いの人もいれば、党に忠実なあまり庶民をいじめる結果になったり。いずれにしても、中央の理念とはかけ離れた末端の様子が描かれている。完全に中国の改革解放前の共産党の統治が庶民にはいかに暗い時代であったかを物語っている。
 最近の中国は80年代以降の生まれの人達が増えて、内戦やこういう文革などを知らない世代もいるが、その親の世代はまさにこの映画のような世界で育ってきたのだ。そう遠い昔のことではない。この映画は、社会的な問題だけでなく、人間のあさましさと同時にたくましさも見せつけてくれる。