天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

毛沢東

 しばらく試験勉強優先で、ゆっくり本を読んでいなかった。一段落したので、買っておいた本をじっくり読んでみる。「現場からの中国論」。経済学者の書く文章らしく、無駄なく少ない字数で結構重いことを書いているな、と思って文化大革命の話になると驚いた。毛沢東を評価している。
 ワイルド・スワンはじめ、今まで読んだ本によると毛の取った政策、大躍進や文化大革命がいかにばかばかしく、人々に苦難を与えたかということが述べられている。しかし、この本によると経済学的視点ではそれらはいずれも意味のあることであり、毛の建国以前からの政策論理と矛盾なく、一環したものであるという。
 述べている内容はここでは省略するが、理屈はある。しかし、大躍進では2000万の人が餓死し、文革でも多くの知識人が葬り去られ、ワイルド・スワンの父親のような真面目一方の共産党員が苦難の上、非業の死をとげている。そういう現実がありながら、その政策の擁護論には賛成しかねる。この本に書かれている理屈では、少し無理があるように思える。人間の行動動機はすべて金だということを前提にしている。財を得る手段もいろいろだが、その辺も見極めが足らないように思える。これはあらすじのような本なので、この先生の学術書を読めば理屈でなく論理的だと思うかもしれない。しかし、人民に苦難を与えた事実は否めない。
 そういえば、日中友好協会が分裂した理由は文革の評価が分かれたからと聞いていたが、中身はこういうことだったのかもしれない。しかし、その他の部分ではこの本は鋭い中国分析をしている。(ように見える。)
 中国を大きな経済の流れの中で見れば、毛沢東のやったことの中で功績は確かに大きい。しかし、私はそのあたりにはあまり興味がない。今日も帰りの電車のなかで、もうある部分では日本も中国も分けて考えるのは遅れているのではないかと感じた出来事があった。
 電車に座ってこの本を読んでいる時、前で若い勤め人風、あるいは就活中のような格好の男女が小声で話しているのが聞こえていた。周囲に気遣った小声なので気にならなかったが、フトそれが中国語であることに気づいた。顔を上げて見ると、まじめになにかを相談しあっている様子。中国の地下鉄の中では、みな大きな声で怒鳴りあうように話をしているのが普通。なのにこの二人の様子は日本人のよう。日本の生活が長くてマナーなどの日本風生活様式が身に着いているのだと思う。でも中国人でしかも利発そう。ウチの娘か息子になってくれたら嬉しいかもしれないと思える感じ。
 もう中国も日本も無い時代が来るのだ。平和裏に世界の、特にアジアの時間が経過すれば、必ずそうなる。そのときの言葉は日本語だろうか中国語だろうか。日本で仕事をするなら日本語。中国で仕事をするなら中国語。文化は住み分けがいい。でも意識は次第に同じような方向になるだろう。経済基盤が順次混ざりあっていくのだから。