天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「キンモクセイ連鎖集団」蘇童

 香り高い金木犀は色々種類があるようだが、中国では「桂花」と総称されている。香水になったり、薬用効果もあるので色々なものに利用されているらしい。この小説は、そんなキンモクセイを育てている地域が、国営会社として都市部に売りに出す様子が背景としてある。連鎖集団とはチェーングループと訳されているが、企業グループのようなものだろう。
 時代背景は改革開放から間もない頃であろうか。中国の会社形態としては、外資系とか外資との合弁でなければ、当初は大抵地域集団が会社組織を作った所謂国営会社と聞いているが、この話の会社というのもそういう成り立ちのものだ。時代背景を踏まえると、そういう会社の実情や雰囲気がよく伝わってきて興味深い。
 会社だけでなく、それまで共産主義教育一筋で育った人達が、会社を作って商売を始めてゆく際の、問題やら葛藤やら人々のもめごとなどが表現されている。
 主人公は、元々ウソツキとの評判を持った人物であるが、その地方政府が会社として地元産品のキンモクセイを売るときには、嘘も方便、売るためには相手に受けることは何でも言ってしまう性癖が営業には向いている。そのやりくちを、幼馴染の同僚に教えたところ、友人は詐欺罪でつかまってしまう。友人は、口八丁だけでいくらでもお金が集まることが面白く、頭に乗ってやりすぎたのだろう。そこには商業道徳も倫理も何もない。つい最近のどこかの国にもこういう輩はいるなあ。中国だけではない。ウソツキ商売はどこにでもあるかも。
 主人公を取り巻く故郷の人達の反応もとても中国っぽくて楽しい。
 現在の中国の会社というのは、こういうのとは少し違い、まったく欧米企業と対等にやってゆける高度なしたたかさを持った企業になりつつある。この物語は中国の一時代を背景にしながら、中国人そのものを描いているといえようか。
 中国の現代作家は結構面白い。