天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「からゆきさん」 森埼和江

この本は、嶽本新奈さんの「からゆきさん」を読んでから、元祖「からゆきさん」を読もうと取り寄せたのだった。山崎朋子さんの「サンダカン八番娼館」とほぼ同じころ、即ち40年ほど前に書かれている。

「サンダカン八番娼館」と同様に、元からゆきさんに直接話を聞いて、当時の実情を細かく書いたものだ。山崎さんのほうが、特定のからゆきさんに密着取材しているのに対して、こちらはもう少し広く、いろいろなケースを紹介している。いろいろというのは、出かけた土地がシベリア、中国、香港、東南アジアなどいろいろであったことと、娼館から抜け出して事業を始めた人とか、騙されて行った先でおんなの仕事を拒んで返されたケースもあったことなど。一口に「からゆきさん」と言ってもその有りようは様々であったことが書かれている。
その中で、売られて行ったにしろ、そこで生き抜くために日本人の矜持を捨てないで、日本人の女性であることをことさら示すことで生き抜いた人もいた。なかなか見上げた女性もいたものだ。
そのころ海外に出たのは、女性ばかりではなかった。日本で食い詰めた元士族が、大陸浪人と呼ばれる存在になり、中国の人民のために戦った人たちもいた。これとて、仕方なく行った人から、見上げた理念で活躍した人までいろいろだったのだろう。
要するに、この時期は鎖国から解放されて、海に近いところにいた人たちには生きるための選択肢として海外があったということなのだ。
からゆきさん。娼婦として渡っていったからゆきさんは、日本がアジアに拡大政策をとっていった時に、男たちに仕事をさせるための安全弁として利用されたり、現地調達した人たちの慰撫する役割を担わされたりした。現在、従軍慰安婦の問題として告発されるのは、国策としてこういうことを行い、要員不足を現地で強制連行ということを行った事実がある。そういうことなのだ。
なので、従軍慰安婦の問題は、歴史として存在したからゆきさんと混同してはならない。からゆきさんの存在は、貧困から来たもので決して誇れるものではないにしろ、当時という時代に外国をものともせずにたくましく生き抜いた人たちがいた事実として知っておくべきことであり。日本兵のために強制連行した問題とは違う。これを混同してものを言う無知な知ったかぶりタコは許せない。