デュアパーパーぽデュ ウバッシュダンダン デュアパーパーぽデュ ウバッシダンダン
昨日ケメコに会いました。
―池袋に行く電車の中で数十年ぶりにケメコに会いました
マスクをしていたので、眼と姿だけ見えてました。
混んでない特急列車の斜め向かいに座っていました。
マスクの上に見える眼は昔と同じ、涼やかな眼でした。
その目で、スマホではなく文庫本を読んでいました。
そういうところも昔と同じ、あれはケメコだと思いました。
チャコールグレーのスニーカー履いて、ジーンズの長いスカート、
ホワイトに細かい青い花柄の綿シャツを着ていました。
その格好で、パンパンに荷物の入った濃いピンクの山用のリュックを
網棚の上からおろして、本を取り出したのでした。
僕はもうすぐ読み終わる本を読んでいましたが、それがケメコだ
と気づいてから、半分本で顔を隠しながら、本の陰からケメコの様子を
ちらちらとガン見してました。
どこからどこに行くのだろう。大きな荷物を持って。
高尾山口発、新宿行きの特急列車です。
新宿について、声を掛けられないうちに見失いました。
でもあれは絶対ケメコです。
昔、学生運動に燃えていたケイコさんが、生活に疲れ果てて昔の仲間に連絡してきたときのことを思い出しました。昔の情熱はどこに行ったのか。現実の世の中で生きるってこんなことかと、その時は少し悲しくなりました。
それを思うと、昨日のケメコはしっかり前を向いて歩いている。そんな感じでした。だから声をかけなくてよかったんだと思いました。
東京に住んでいたら、またすれ違う時があるかもしれない。ないかもしれない。でもすれ違ったままでいいんじゃないか。