天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した

 この本は、哲学系YouTuberじゅんちゃんのお奨めの本の中のひとつ。

このじゅんちゃんて人は、ほぼ毎日12,3分の講義をYouTubeに流している。長すぎず、要点をまとめて話しているので、とても分かりやすい。ここでは、辺野古基地建設工事が再開されたというニュースに対して怒り心頭と思われる内容を語っている。

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 いつもはこれくらいの長さの講義だが、数日前にライブで1時間くらいかけて5冊の本を紹介していた。いつも理路整然と政権批判を語るじゅんちゃんが何を読んでいるのか興味があったので、あまり固くなさそうなタイトルの本を選んでみた。

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 タイトルから見て、アマゾンの倉庫勤務とウーバーで働いて、どちらも大変な職場なのだ、ということが書いてある、即ちそういう経験をした人が、自分の経験を本にしたら売れた、というのかと思ったら少し違った。

 まず、著者のジェームズ・ブラッドワースという人はもともとジャーナリストで、英国の労働者の実態を調査する目的で自らそこに潜入してこの本を書いた。副題に「最低賃金労働の現場」とある。

 体験した企業は、アマゾンとウーバーだけでなく、訪問介護の仕事にコールセンターの電話オペレーターもやっている。場所はアメリカでなく、ロンドン郊外の英国の田舎町。かつて炭鉱で栄えた町に、アマゾンがでかい倉庫を建てた。

 英国特有の事情もあるが、これらにの企業の従業員がどのような環境で働いているのか、多くのことは先進国に共通した現実のように思える。

 要するにこれらの仕事は、格差社会の底辺にある仕事になっているということ。アマゾンの倉庫の場合、元の炭鉱労働者の職場になっていると思ったら、ほとんどがルーマニアなどから流入する外国人労働者

 こうした仕事を得るには、まず人材派遣会社に登録する。つまり派遣社員とか契約社員という身分で、普通に働いていればその会社の上役になることはない。コールセンターの場合、スパーバイザーもベテランの派遣社員

 訪問看護は、施設内でおこなう介護職と違い、1日に何件訪問するかという契約になっており、件数消化するには1か所の滞在時間が短くなる。満足な介護ができない。という結果になっている。

 これらの職種は、日本でいわゆる3Kというのとは少し違ったイメージがあるが、実態はこうだということ。ゼロ時間契約、つまり仕事が無い日もあることを前提とした雇用契約だったりする。仕事が無ければその日の賃金もない。

 このジャーナリストは、格差社会の実態を知らしめようとしている。それだけでなく、英国の場合EUからの安い労働力の流入で、低賃金が促進されてしまったことも、EU離脱となってしまった一要因でもある。

 グローバル化が賃金の低下を招くだけでなく、ギグエコノミーについても調査している。それがウーバー。すなわち、インターネットで単発の労働力を求める。労働力の需要と供給が最小単位でマッチングする。聞こえはいいが、しかしてその実態は。

 科学技術の進歩も、労働の質が変わり、その値段も変わってくる要因。こういう社会で格差の解消といっても簡単なことではない。行政がよほどしっかりしていないと、国民が幸福を感じることはむつかしい。お友達優遇や、献金企業優先の政治ではぼつかない。

 現実を知るには、新しい本も読まなくっちゃ。