天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「中国土地改革体験記」

 秋山良照という方の書いたこの本を読んで、まず中国でこのような体験をした日本人がいたことに驚く。横浜の古本屋で本を手にした時は、このタイトルの意味することがわからなかった。中国の農業に貢献するために、土質の改革にでも携わった方かしらと思ったらとんでもなかった。年齢は私の父より少し上、本が出版されたのは昭和52年。私が大学を卒業して2年、今から30年以上も前のことだ。
 当時、私の大学時代は、まだ中国共産党の信奉者たちも学内にいて、学生運動のとあるセクトの中核になっていたりした。また構内の売店では藍色の人民帽を売っており、私はそれをかぶって悦に入っていたこともあった。
 当時の私にとって、中国の印象は薄かった。昔、世界史として習った中国の歴史は清までであり、近・現代史が抜けたまま、大学の学生運動に燃える学友たちから、中国共産党中共)の情報が流れてきていた。その後、中国に関心も無く、関係も無い仕事を続けていた。6年前に中国進出に関わる仕事に就くまでは、まったくのブラックボックスだった。
 ただ、その間の1989年には天安門事件がテレビで報道されたし、中国共産党の圧倒的なリーダーであった毛沢東が、詳しくは知らないにしても、その後半には「悪いやつ」という評価があったという程度の認識だった。
 さて、この本は日中戦争から昭和33年までの、19年間にわたる筆者の中国における中国共産党の農村活動の体験記である。搾取されていた農民の意識改革をしながら、共同生産体制へ指導してゆくのだが、農民と一緒になって活動をしてゆく様子が記されている。
 貴重な記録であることをまずもって評したい。このような記録が100円で手に入ることの不思議はさておき、この記録は中国共産党が、国を改革する為に、農村の古い因習を打ち破り、どん底の暮らしをしていた多くの農民を開放してゆく、まさに現場を記録したものだ。これを読む限り、ここに書かれたような活動が地道に続く限り、中国の農村は「明るい農村」へと変わってゆくはずではなかったか。
 しかし、その実態はというと、農村で食えなくなった人々が大量に都市に出稼ぎに出ている。村には年寄りと子供が残り、親に会えない寂しい子供達の様子が日本でもテレビで伝えられている有様。
 一方、都会に出た親たちは、都市での戸籍を持たないた為に、不自由を強いられながらも体を張ってお金を稼ぐ。今や学歴社会となった中国では、農村からの出稼ぎ組みにいい給料の仕事があるあるはずもない。わずかな賃金を節約して田舎に送金したり、年に一度の春節に帰郷したりする。中国の経済はこのような低い賃金の労働者に支えられていると言っても過言ではない。
 では、一体今の中国の農村はどうなっているのだろうか。と思ったところ、恰好のタイトルの本があった。その名も「中国農民調査」。
こちらは中国人著者による、赤裸々な実態が記されている。が、あくまでもこれは小説だということだ。